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エコ森林通信

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エコ森林通信 vol.34

我が家の庭の生物多様性

自然環境部 陸域担当チーム
神 昌行

 

 生物多様性の保全が広く謳われる昨今、皆さんの身の回りには、実際、どのような生き物が生息・生育し、私たちにどのような恩恵をもたらしているのか考えたことがありますか?

 私は、北海道内各地を行き来し動植物の調査をすることを生業としていますが、身の回りの生き物についてはあまり意識して観察したことがありませんでした。そこで、より身近な環境である自宅の庭について、どのような生き物が棲んでいるのか観察してみることにしました。今回は、観察された生き物の中から、昆虫について紹介したいと思います。

 菜園に立てた竹竿では、アキアカネやノシメトンボ、ナツアカネなどの赤トンボの仲間が竿先を奪い合っていました。中でもナツアカネの雄(写真1)は、頭から尾の先まで赤く染まり、一際目を引きます。童謡として歌われるなど私たちの身近なトンボですが、蚊やハエ等の小さな飛ぶ虫を食べてくれる益虫としても私達に無くてはならない存在です。


写真1 竿先に止まるナツアカネの雄(筆者撮影)

 庭に植えたサンショウの木には、ナミアゲハの雌(写真2)が卵を産みに来ていました。アゲハチョウの仲間はその大きさや美しさから家紋1)や着物の柄に用いられるなど、私たちの生活に古くから関わりのある昆虫です。また、花の蜜を吸いに来ることで、植物の受粉を助ける昆虫として、とても重要な役割を担っています。我が家の庭ではこのほかにモンシロチョウやツバメシジミ、ジャノメチョウなど数多くのチョウを観察することができました。


写真2 卵を産むナミアゲハの雌(筆者撮影)

 日が沈み暑さが和らぐと庭の片隅から、エンマコオロギやマダラスズなどの秋に鳴く虫の声が聞こえてきます。それらに混ざり、ルルルルル・・・・・と一際目立つ透き通った鳴き声が聞こえてきました。
 鳴き声のする方向に懐中電灯を向けてみると、菜園に植えたカボチャの枯れ葉に開いた穴から顔を覗かせて鳴いているのはカンタンの雄(写真3)です。少し物悲しくも聞こえる鳴き声からは、夏の終わりを感じずにはいられません。

 
写真3 羽を立てて鳴くカンタンの雄(筆者撮影)

 今回はほんの一部しか紹介できませんでしたが、住宅地の僅かな緑を利用して様々な昆虫が暮らしていることが分かりました。

 今回紹介したのは比較的見た目が「きれい」であったり「鳴き声が美しい」昆虫たちですが、紹介できなかった虫たちの中には、「きもちわるい」や「あぶない」など、しばしは敬遠されがちな虫たちも数多く存在します。一見して私たちの生活に無関係あるいは有害に思われる虫たちも、一部の外来種などを除き、生態系を支える重要な役割を担っており、私達の豊かな生活を支える上でなくてはならない存在です。私は、これら虫たちが棲める環境を将来に渡り守っていきたいと思います。

 

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