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エコ森林通信 vol.32

ヒグマの生態を知り、上手に付き合う

自然環境部 陸域担当チーム
山下 純平

 

 5月に入り暖かい日が多くなりました。すっかり雪も解け、山へ山菜取りなどに出かける方も多いのではないでしょうか。これからの季節、ヒグマはオスとメスの出会いの時期になります。オスはたくさんのメスと出会うために活発に行動するようになり、山林を歩き回ります。そして、オスは交尾をしたいために、交尾をしない子連れのメスの子熊を殺してしまうこともあります。そのため、オスを避けたい子連れのメスや親離れしたばかりの若いオスが強いオスを避けたいがために、市街地付近に出てきてしまうことがあります。このため、この時期には人とヒグマとの距離が近くなり、人身事故が発生しやすくなります。

 ヒグマは、冬眠中に400gほどの赤ちゃんを出産します。冬の間、母グマは冬眠穴の中でおっぱいだけで子育てし、春に冬眠から覚めるころには赤ちゃんは4㎏~5㎏になっています。子熊は1歳半~2歳半までの間に独り立ちします。独り立ちをした若いオスは、新たな生息場所を求めて移動します。その際に人間が住む場所に出てきてしまうこともあります。

 2021年に札幌市東区に出没し、人身事故が発生して世間を騒がせたヒグマは、オスの若い個体でした。このヒグマは、何らかの理由により市街地に侵入してしまい、身を隠すことができる場所を探していた結果、商業施設に入ろうとしました。その後、報道機関や市民に見つかり逃走する際に出会った人を攻撃したもので、興奮状態が高まったことが事故発生の一因であったとされています。

 ヒグマは、本来、臆病で用心深い性格をしています。このため、身を隠せる草むらや森林の中を伝って移動し、市街地に侵入してしまうことがあります。そこで、河川敷きや山林の草刈りをして緩衝帯を作ることによりヒグマの侵入経路を分断し、ヒグマに、ここからは人が住む場所だと示すことが大切です。また、ゴミの出し方も注意が必要です。ヒグマは嗅覚が発達しているため、ゴミを目当てに市街地に出没することがあります。ヒグマが、ゴミを食べて味を覚えると、繰り返し出没するようになります。ヒグマとの軋轢をなくすためにも、ゴミ出しのルールを守りましょう。

 ヒグマが生息する山林に入る際には、一人では入山しないようにし、茂みの近くや見通しが悪い場所を通る際は手をたたく、大きな声を出すなど、自分たちの存在をヒグマたちに知らせてあげることが大切です。もし、山の中などでクマの気配(足跡、糞、臭い、食痕、足音など)を確認したら、急いでその場を離れましょう。

 人里近くでヒグマを見かけた際は市町村役場、もしくは警察へ連絡しましょう。北海道庁では、ホームページやSNS等で、出没や被害の内容に応じた3段階のレベルに分けてヒグマ注意報等の発出を実施しています(北海道ヒグマ注意報等について - 環境生活部自然環境局 (hokkaido.lg.jp))。

 野外に出かける際には、このようなヒグマに関する情報を事前に確認することをお勧めします。

 

ヒグマの幼獣


ヒグマの足跡

 

[1]ヒグマの生態・習性(札幌市環境局環境都市推進部) https://www.city.sapporo.jp/kurashi/animal/choju/kuma/seitai/index.html
[2]市街地や農耕地にヒグマを引き寄せないため(北海道環境生活部自然環境局) https://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/skn/higuma/higuma-urban.html
[3]ヒグマによる人身事故発生状況(北海道環境生活部自然環境局) https://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/skn/higuma/higuma-accident.html

 

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