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エコ森林通信 vol.30

高病原性鳥インフルエンザの感染拡大を防げ(前編)

自然環境部 陸域担当チーム
福島 想

 

 昨年の秋以降から、鳥インフルエンザに関する報道が新聞やニュースなどで数多く取り上げられ、目にされた方も多いと思います。また、関係者の方々は大変なご心配、ご苦労をされていることと思います。被害に合われてしまった方には、心からお見舞い申し上げます。

 鳥インフルエンザは、越冬する渡り鳥によってウイルスが持ち込まれるとされ、日本では、例年、秋から春ごろにかけて発生します。今シーズンは昨年10月28日に岡山県倉敷市と北海道厚真町で、これまでで最も早い時期に確認されたあと、過去にないペースで発生が相次いでいます。今シーズン、鳥インフルエンザで処分されたニワトリなどの数は、過去最多となっており、1つのシーズンで初めて、合わせて1,500万羽を超えました(3月2日現在)。この処分数は、これまでで最も多かった2020年からのシーズンの1.5倍となっています。

 今回のエコ森林通信では、この鳥インフルエンザについて、前編・後編の二部構成で紹介します。まず、前編では、鳥インフルエンザについて概説し、高病原性鳥インフルエンザの流行を予測・監視する我が国の取り組みを紹介します。続く後編では、この取組みの課題を解説いたします。

 

◆鳥インフルエンザについて
 鳥類に感染するA型インフルエンザウイルスをまとめて鳥インフルエンザウイルスと言い、家畜伝染病予防法では、家きんに対する病原性やウイルスの型によって、高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)、低病原性鳥インフルエンザ(LPAI)などに区別しています。A型インフルエンザウイルスは、人を含む哺乳類と鳥類に広く分布しています。水鳥(主にカモ類)が自然宿主で、通常は病原性を持ちませんが、カモ類等の渡りにより広くウイルスが運ばれ、家きん集団の中で感染が繰り返されることでHPAIが発現します。人に感染する場合もありますが、最も問題視されるのは養鶏場で感染が起こった際の産業被害です。

 各関係機関では、HPAIの流行を未然に防ぐため、水鳥の渡り経路を解明し、繁殖地(飛来元)のHPAI発生状況を把握するほか、日本国内各地(越冬地又は中継地)の飛来状況をモニタリングするなど、様々な対策が講じられています。しかし、野生鳥類の渡りの特性上(多数の渡り鳥が様々なルートで一斉飛来する)、非常に多くの感染経路が考えられるため、行政や民間が一体となり人手や技術を充足させることで、監視範囲を拡大し、より密に情報共有していく必要があります。

◆鳥インフルエンザサーベイランス
 HPAIの流行を予測・監視し、リアルタイムで情報配信を行うサービスを鳥インフルエンザサーベイランス(以降、サーベイランス)と言います。日本では、家きんにおけるサーベイランスは農林水産省、野生鳥類については環境省が主導しています。本稿では後者の環境省サーベイランスに着目してみます。

 環境省サーベイランスは野鳥の感染状況を把握するため、主に秋冬に飛来するガンカモ類の糞便および死亡野鳥から検体の採取を行い、ウイルス保有の有無をモニタリングしています。サーベイランス手法はアクティブサーベイランスとパッシブサーベイランスの2つに大別され、前者は人工衛星や足環で飛来源や経路を解明するほか、渡り鳥の飛来状況をモニタリングし、渡り鳥が多種多数混在する地域又はそれらと家きん場の距離を憂慮して、感染リスクが高い場所を特定します。一方パッシブサーベイランスは、死亡野鳥から検体の採取を行い、ウイルス保有の有無、感染状況を把握する受動的な監視方法です。

 野鳥には種ごとに感染例数に応じて検査優先度が指定されており、4カテゴリー(検査優先種1・2・3、その他の種)に分類されます。また、HPAIの発生状況により、対応レベルが3段階(発生無し-レベル1、国内単一箇所発生-レベル2、国内複数箇所発生-レベル3)に区分され、検査優先度と対応レベルに応じた死亡個体数によって検査指標が定められています(下表参照)。


野鳥における高病原性インフルエンザに係る対応技術マニュアル(抜粋) R4.10版

生物多様性、J-クレジット、鳥インフルエンザ、HPAI、民間参加型調査、森林サービス

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