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エコ森林通信 vol.25

自然の価値の評価

自然環境部 陸域担当チーム
渡邉 香織

 皆さんは自然の「価値」について考えたことがあるでしょうか。きっと、多くの方は「自然は大切だ、大事にしなければいけない」と考えていると思います。では、「それにはどのくらいの価値があるのでしょうか?」という質問について、具体的に回答できる方はいるでしょうか。「自然=タダ」と思っている方もいるのではないでしょうか。今回は、「自然の価値を評価する方法」[1]について、少しだけ紹介します。

 皆さんは、「TEEB」をご存知でしょうか。これは、「生態系と生物多様性の経済学(The Economics of Ecosystem and Biodiversity)」の頭文字をとったもので、2007年にドイツ・ポツダムで開催されたG8+5環境大臣会議で、欧州委員会とドイツにより提唱されたものです。「TEEB」は、すべての人々が生物多様性と生態系サービスの価値を認識し、自らの意思決定や行動に反映させる社会を目指し、これらの価値を経済的に可視化することの有効性を謳ったものです。

 この中では生物多様性や生態系サービスの価値を認識してから実際の保全につなげるまでの3段階のアプローチを示しており(図1)、これにより生物多様性や生態系サービスの保全と持続可能な利用を達成することを奨励しています。

 

 では、生態系サービスの価値は、どうやって可視化するのでしょうか。

 価値を可視化するには、自然の価値を分類する必要があります(図2)。まずは、大きく「利用価値」と「非利用価値」の二つに分けられます。このうち、例えば、直接的利用価値では、市場価値が存在するので、それを利用して経済的価値を評価することができます。
 


 では、実際の評価はどうなっているのでしょうか。TEEBの中で報告されている評価の事例を少しだけご紹介します。

【事例1】マレー川の生態系サービス[2]

 オーストラリア最長のマレー川では、周辺の湿地の多くがラムサール条約に登録されています。この川が提供する主要な生態系サービスは、余暇と観光(29.7億AUドル)、食糧生産(16億AUドル)など、少なくともその価値は、46億AUドル以上とされています。

【事例2】豊岡市におけるコウノトリの経済効果[2]

 人とコウノトリが共生する豊かな自然環境の創出を目指す豊岡市では、平成15年以降、農薬や化学肥料に頼らない、「コウノトリ育む農法」が進められています。この栽培基準に則り米を栽培した場合、慣行農法と比べて収穫量は若干減少するものの、より高値で取引されます。結果として、コウノトリの個体数は増加し、増加したコウノトリ関連の観光による経済効果は、年間10億円以上とされています。

 しかし、これらの経済的価値評価には限界があり、これで全てが表現できるわけではないということ、評価手法の開発は今も進んでいることに注意が必要です。

 私たちにできることとして、まずは、気になる「自然」についての「価値」を考える機会を持つことが重要ではないでしょうか。

 弊社では、身近な自然を感じる機会を持つことのお手伝いができたらと考えておりますので、自然観察会や調査など、お気軽にご相談ください。

 

 

[1] 自然の恵みの価値を計る. https://www.biodic.go.jp/biodiversity/activity/policy/valuation/index.html.

[2] 価値ある自然. “生態系と生物多様性の経済学:TEEBの紹介”. https://www.biodic.go.jp/biodiversity/about/library/files/TEEB_pamphlet.pdf.

 

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