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藻場通信

磯焼けの海を海藻の

藻場通信 vol.31

海藻育成施設の機能、絶賛発揮中!

自然環境部 海域担当チーム
伊藤 尚久

 最近、東北地方南部から九州地方にかけては35℃以上の猛暑日が続いているようですが、こちら北海道は25℃前後の快適な夏を迎えており、観光シーズンの真っ只中にあります。弊社が事務所を構え、前面海域に水中ライブカメラを設置している函館市では、クルーズ船の入港数や台湾との定期航空便数がコロナ禍以前のレベルまで回復しており、インバウンド(訪日外国人客)の増加が期待されているところです。

 こうした中、弊社の水中ライブカメラには多くの生物たちが頻繁に映し出されるようになりました。その主役はウミタナゴ科の仲間であり(写真1参照)、夏真っ盛りの今時期は出現頻度・個体数ともに増加傾向にあります。

 


【写真1】ウミタナゴ科の仲間の群れ

ちなみに、ウミタナゴ科の仲間は根付き魚(海底の岩礁や海藻 の間などに棲み、遠くへ移動することがない生息範囲の狭い魚)です。前段で述べたような「期待されている遠方からの訪問者」ではありません、あしからず…。

 

 そもそも、なぜウミタナゴ科の仲間の群れが今時期になるとライブカメラの前に頻繁に姿を見せるのでしょうか?その理由は以下の2つが考えられます。

 ①出産から間もない時期である
 ウミタナゴ科の仲間は卵胎生の魚であり、お腹の中で卵をふ化させ、3~4cm程度の大きさに成長すると一度に10~80個体ほどの稚魚を体外へ産み落とします(写真2参照)。北海道周辺域における出産期は初夏であり、今時期は生まれて間もない多くの幼魚が群れをなして沿岸域を遊泳しています。

 


【写真2※】 ウミタナゴの体内から取り出された稚魚

 

②採餌場・休息場として利用している
 ライブカメラ前の海藻育成施設や周辺のコンクリートブロック上に着生しているマコンブを中心とした海藻は、今時期が最繁茂期であり、海藻を捕食する動物、海藻の間隙を住処や休憩場所とする小型の動物、それらを捕食する大型の動物(写真3参照)が集まってきます。
 また、海藻育成施設周辺の流況は、護岸・消波ブロックの影響を受けて比較的穏やかであり、小型の遊泳魚が定位しやすく、さらには水中や海底にプランクトンや小型の甲殻類等が集積しやすい環境となっています。
 ウミタナゴ科の仲間は、主に甲殻類や多毛類等を捕食する動物食性であることから、ライブカメラ前の環境は成魚や幼魚にとって絶好の採餌場、休息場になっていると思われます。

 


【写真3】採餌のためにダイブしてきたウミウ

 

 弊社が函館港内に試験設置している海藻育成施設については、各種生物に対して様々な機能を発揮しており、小規模ではありますが良好な生息環境を創出しているといえるでしょう。水中ライブカメラでは、こうした環境をリアルタイムで観察・実感することができます。特に、海藻の最繁茂期である今時期は、多種多様な生物が頻繁に姿を見せてくれるはずです。ぜひとも弊社HPに随時アクセスいただき、自然観察や環境学習の一環としてご活用いただければと思います。

※出典:魚界のビックマミィ?!ウミタナゴ
    https://ameblo.jp/osakana-mami/entry-11910149076.html

 

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