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洋上風力通信

洋上風力発電に関わる環境調査

洋上風力通信 vol.25

洋上風力とサケ

電力環境部 火力発電所担当チーム
西川明豪

 

 石狩湾新港にて洋上風力発電用風車の建設が進められている石狩市、石狩市といえば温泉と石狩鍋、石狩鍋といえばサケと多くの方々が連想されると思います。石狩湾では縄文時代からサケ漁が行われていたことが遺跡の発掘などから明らかとなってきました。明治時代、石狩湾はサケ漁の黄金期を迎えますが、乱獲などの影響でその後は資源量が減少し、1960年から1970年にかけての時期は深刻な低迷期を迎えました。現在は石狩川水質環境の改善や、孵化放流事業の効果もあり、徐々に資源量が回復しつつあります。

 2023年5月12日、再エネ海域利用法に基づく促進区域の指定に向け、有望な区域として北海道石狩市沖を含む北海道の5区域が追加され、今後益々、石狩湾での洋上風力発電用風車の建設が進められていくものと考えられます。

 


石狩湾新港沖に建設中の洋上風車の
ジャケット式基礎(2023年6月30日撮影)

 

 では、洋上風力発電用風車の建設は、サケにどのような影響を与えるのでしょうか?何も無かった洋上に風車を建設し、風を受けて巨大な羽根を回転させることによって電力を発生させるのですから、多かれ少なかれ建設地の海洋生態系に何らかの影響はあると考えられます。洋上風車が周辺の海洋生物環境に与える影響は、回遊経路、風車の影、音、魚礁効果などが挙げられます。サケは回遊魚で母川回帰性を有しており、オホーツク海、ベーリング海、アラスカ湾などを数年(通常は4年ですが、3年から5年の幅があります。)かけて回遊し、母川に産卵回帰してその一生を終えます。

 この回遊には、太陽コンパス、磁気コンパス、海流への走流性、嗅覚などを複合的に活用していると言われていますが、まだ未解明な部分も多く残されています。回遊経路の中に洋上風力発電用風車が多数並んでいると、当然そこを流れる海水の流れ方に変化が起き、サケの回遊にも影響を与えると考えられます。

 海洋生態系はサケを含む多くの海洋生物の相互関係で成り立っており、洋上風力発電用風車の建設が与える影響の評価については、今後の長期間にわたる海洋生態系基礎データの収集とその分析を必要としています。

 弊社は「地球丸ごと見つめます」を常に意識して、北海道をフィールドとして陸と海の生物環境を長年見つめてまいりました。その知識と経験を活かし、洋上風力とサケの関係性についてまだまだ解明しきれていない基礎研究分野へも貢献することができます。

 石狩湾に吹く風の力で電気を作りながら美味しいサケも味わうことができる、そんな北海道のサステナブルな未来の姿を実現するために、弊社のノウハウをお役立てください。

 


石狩湾のサケ(筆者撮影)

 

参考文献
化学と生物 Vol.25,No5(282号)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/25/5/25_5_341/_pdf/-char/ja

 

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