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洋上風力通信

洋上風力発電に関わる環境調査

洋上風力通信 vol.16

刺し網を用いた漁業影響調査について

電力環境部 泊発電所担当チーム
石原 樹

 前回、「洋上風力通信Vol.15」にて漁業影響調査に係るモニタリング調査についてご紹介させていただきました。今回は調査としての有効性が高い刺し網を用いた漁業影響調査についてご紹介させていただきます。

 刺し網は、目的の魚を網目に刺して、あるいは網地に絡ませて漁獲する漁具を総じて呼んでいます。一般的に魚類の移動は、水平方向に広く活発で垂直方向はほぼ一定範囲に限られることから、網の形状は帯状のものが多く、魚群が通過する進路を遮断するように設置して使用されます。また、網地材料は現在では細くて強靭かつ魚体を保持するのに必要な伸び特性を持っている『ナイロンモノフィラメント糸』が主に使用されています。


写真 ナイロンモノフィラメント糸

 

 刺し網は網の固定の有無、設置する水深帯、魚群への囲い込み・魚群進路の遮断などの方法によって浮き刺し網、底刺し網、流し刺し網、旋(まき)刺し網の4つに大別されます。各々の特徴は以下の通りです。

 

〇浮き刺し網:水面近くに張り、その両端または一端を錨(いかり)で固定する。
〇底刺し網:海底に網を固定する。
〇流し刺し網:網を固定せず、海潮流や風波のまま網を漂流させる。
〇旋刺し網:魚群を網で囲い、棒などで水面をたたいて魚を網におびき寄せる。

 

 網目に刺して獲るものは、イワシやサケ・マスのような体形が紡錘形をしており、魚群の各個体の大きさがほぼ均一である魚種に使用されます。一方、網地に絡めて獲るものは、カレイやヒラメのように魚体の大きさが不均一である魚種に使用されます。刺し網は多様な魚種がとれ、設置しやすく調査に使いやすいといった利点から、漁業影響調査では広く使用されています。

 


図 刺し網のイメージ(出典:農林水産省HP)

 

 しかしながら、刺し網の設置には加味しなければいけない点がいくつかあります。設置には場所を選びませんが、実際に地元の漁業者からは、海底地形や海底の構造物の状態により漁具破損の可能性から、なるべくなら前浜以外の地点での漁はやりたくないとの声も聞きます。調査の際は地元の協力が欠かせないことから、これらの声に耳を傾けることが重要です。

 これまでに洋上風力発電施設を対象に行われた漁業影響調査事例は少なく、当社は発電所モニタリング業務や魚礁(漁場)業務をその影響を事前に予測・評価することが困難です。通して漁業者と密接な関係を築き上げております。また、多くの漁業影響調査の経験を有しており、この漁業影響調査で漁獲された海生生物の基礎的な分類のみならず、生理・生態など専門的な知見をも豊富に有する社員が多く在籍しております。漁業影響調査を含めて海生生物の調査において、もしお困りのことがございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。

 

参考資料
農林水産省HP 漁業種類イラスト集(https://www.maff.go.jp/j/tokei/census/gyocen_illust2.html

川島ら(1988)改訂版 新水産ハンドブック.講談社.

 

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