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エコニュースVol.326

2020年08月01日

アフターコロナの水産業イノベーション

 株式会社エコニクス 環境戦略部
事業企画チーム 伊藤 尚久

 

 本来であれば、今頃は東京オリンピックの開催真っ最中のはずでした。日本のみならず、世界各国の人々が四年に一度の祭典に熱中し、大変盛り上がっていたことでしょう。

 しかし、実際は、新型コロナウィルスが世界中で猛威を振るい、世界各国が途方もない規模の経済・社会的インパクトを被る状況に様変わりしてしまいました。今、私たち人類は大きな社会変動のうねりの真っ只中にいるといえるでしょう。

 こうした中、私たちは今まで考え付かなかった様々なことに気づかされました。

・社会活動の基盤として必要不可欠なものと信じていた「人と人との緊密なコミュニケーション」は、時として制限する必要があるということ。

・当然のこととして信用していた広域の移動やサプライチェーン(供給連鎖)は、時として機能しないことがあること。

などがその例です。

 そして、より便利で安心な「新しい社会様式」を実現していくためには、医療・教育・家庭・製造業・行政事務といった各分野におけるイノベーション(デジタルシフト等)が必須であることを実感させられました。

 

 一方、今回のコロナ禍は、世界中の外食産業の需要を大幅に落ち込ませることとなり、その結果、北海道の主要産業である水産業も多大な影響を受けました。水産物の取引価格が低迷する「価格崩壊」が起きたのです。近年、資源の減少、担い手不足、魚離れといった問題を抱えていた水産業にとって、まさに追い打ちをかける形になりました。上述のとおり、今まさに水産業においても大々的なイノベーションが必要とされています。

 

 水産業におけるイノベーション(デジタルシフト等)については、様々なハードルを抱えつつも、全国各地でさまざまな取り組みが行われています。水産庁は「スマート水産データベース(仮称)」の構想を掲げ(図1参照)、水産関連企業や漁業協同組合が個々に持つデータを集約することで、バリューチェーン(価値連鎖)全体の生産性向上を図ることを目標としています。

 

図1 スマート水産業のイメージ

“平成29年度水産白書 水産庁”より引用

 

 当社は、こうしたイノベーションの一助となるべく、主に「漁業者・養殖業者の“ICT機器を活用した漁場・養殖場の海況のセンシング”」に関する技術開発に取り組んでいます。その一例が「海洋モニタリングセンサを備えた多機能水中カメラ(図2参照)」です。専用水中カメラで撮影した高画質映像をリアルタイムで配信しつつ、環境データ(水温、塩分、クロロフィルa等)も同時に計測・配信するシステムであり、まさに“漁場環境の見える化”を図ることがねらいです。

 “漁場環境の見える化”が蓄養殖施設の維持管理や飼育管理等に関する作業の効率化・安全化に大きく寄与し、アフターコロナの水産業が日本の将来を担う若者にとって魅力的な産業になってくれればと考えております。

 

図2 海洋モニタリングセンサを備えた多機能水中カメラ

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