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エコニュースVol.209

2010年11月01日

<生物多様性シリーズ Part7>

ウグイをよく見てみよう

株式会社エコニクス
環境事業部 水域環境チーム 森山 友雄

 日本に生息するコイ科ウグイ属は、ウグイ、エゾウグイ、マルタ、ウケクチウグイの4種がいます。そのうち北海道には、ウグイ、エゾウグイ、マルタの3種が分布し、その生活型はエゾウグイが一生を淡水で過ごす淡水型、ウグイが淡水型と海に降りる降海型の2型、マルタが降海型として知られています。なお、ウケクチウグイについては秋田県から新潟県までの大きな河川に生息し、環境省レッドデータ(絶滅危惧IB類)にリストアップされています。

 北海道における河川の魚類調査では、場所によってはウグイ属の2種(ウグイ・エゾウグイ)が同時に確認されることがあります。
 ところがこの2種は見た目が似ていることから、現地で数多く捕獲した場合の同定には細心の注意と根気、そして集中力が必要となります。個体の大きさにもよりますが、熟練者はパッと見た瞬間に直ぐに見分けることができます。
 ではこの2種の現地での見分けるポイントを紹介します。
現地でのウグイ・エゾウグイの見分けるポイント:
 婚姻色・尻鰭の外縁の形状、頭部側線感覚器官の後顳(こうせつ)じゅん連合の開口部の数、背びれ前鱗数



「日本産魚類検索 全種の同定第二版(東海大学出版会)」に一部加筆


「原色淡水魚類検索図鑑(北隆社)」に一部加筆)

 実際には、複数のポイントを見て種の判別を行うことになりますが、春になるとウグイ属は産卵期を迎え、婚姻色が体に現れますので、容易にウグイ属の見分けができると思います。
 それ以外の時期や小型の個体では、尻鰭の外縁の形状や背びれ前鱗数が主に見分けるポイントになるでしょう。「頭部側線感覚器官の後顳(こうせつ)じゅん連合」の開口部とはかなりマニアックな言葉ですが、生きている個体では開口部を見つけることが難しいことがあり、かなり上級者向けといっていいかもしれませんね。では、どうやって確実に開口部の数を数えるか?これには裏技があります。でも紙面の関係上、今回はここまで。またの機会にしたいと思います。
 図鑑を見ると判り易いのではないかと思うかもしれませんが、実際の魚を見ると意外と迷ったりする人が多いです。もし釣りに行った際、ウグイが釣れたらじっくり観察してみてはいかがでしょうか。そうすれば「外道」も可愛く見えてくると思いますよ。

■参考文献
レッドリスト「絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト」(環境省、2007)
漁業生物図鑑 新 北のさかなたち(北海道新聞社)
原色淡水魚類検索図鑑(北隆社)
日本産魚類検索 全種の同定第二版(東海大学出版会)

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