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エコニュースVol.214

2011年04月01日

<化学分析シリーズ Part5>

体の酸化と抗酸化能

株式会社エコニクス
技術開発部 研究開発チーム 高橋 かおり

 体の酸化とは時として様々な疾病を引き起こすと考えられているため「酸化ストレス」と呼ばれます。例えば酸化された脂質が動脈硬化の原因、酸化による脳神経の破壊がアルツハイマー病の原因といわれています。90%以上もの疾病に体の酸化が関係しているという研究者もいます。
 私たちの体は、フリーラジカル(一酸化窒素、過酸化水素、一重項酸素など)や活性酸素(過酸化水素、スーパーオキシドなど)と呼ばれる酸化力の強い物質によって酸化されますが、この酸化力は生命活動において重要な働きを持っています。
 例えば血管内皮でつくられる一酸化窒素は、血管を拡張することで血圧の調整をしています。また、活性酸素のもつ酸化力は体内に侵入したウイルスを攻撃し、私たちの体を守ってくれます。そして過剰なフリーラジカルや活性酸素はやがて酵素で分解され、酸化力の無い物質に変えられます。
 しかし、老化・ストレス・大気汚染などの要因で、体内のフリーラジカルや活性酸素が異常に増加したり、それらを分解する能力が低下したりすると、不必要な体の酸化が進み様々な疾病を引き起こす原因となる場合があります。
 このような酸化ストレスに対し「抗酸化」という能力が注目されています。抗酸化とは、脂質や神経など体が酸化される前に身代わりとなって酸化されることをいいます。抗酸化物質としてビタミン類やポリフェノール類が注目されています。
 これらビタミン類(ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、アスタキサンチン、ユビキノンなど)やポリフェノール類(カテキン、タンニン、アントシアニン、イソフラボンなど)にはたくさんの種類がありますが、どの抗酸化物質がどの活性酸素やフリーラジカルにどれだけの抗酸化の能力を持っているのか、といった評価方法はまだ確立されていません。
 そこでエコニクスでは、「ECO FINNDER PROJECT~健康へのエビデンス(証拠)をみつける羅針盤~」と名付けたプロジェクトのひとつとして、札幌医科大学藤井博匡教授との共同研究によるESRを使った抗酸化能の迅速測定法の実用化を進めています。


写真 ESR装置(札幌医科大学)

 ESR(電子スピン共鳴)とは、フリーラジカル(不対電子を持った分子構造)に対し、ある特定の磁場において電磁波を照射すると、物質に共鳴が起こり、その電磁波が吸収される現象をいいます。
 化学反応により発生させたある目的のフリーラジカルが、抗酸化物質によって消去され、電磁波の吸収量が減少することから、この原理を使い抗酸化能として評価をします。
 現在、食品などの抗酸化能評価のための測定技術の開発とデータ蓄積、そして評価方法の開発を弊社で行っています。
 健康という人間が最も大切な豊かさを得るため、その橋渡しのための技術開発をこれからも取り組んでいきたいと思います。

■参考資料
電子スピン共鳴(wikipedia)
電子スピン共鳴(大阪大学レーザーエネルギー学研究センター)
ESRの原理(日本電子株式会社)
フリーラジカル(wikipedia
抗酸化物質(wikipedia)

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