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エコニュースVol.263

2015年05月01日

<外来種シリーズ Part5>

カエルで考える北海道の「国内外来種」

株式会社エコニクス 環境事業部
陸域環境Ⅰチーム 松本 明日

 

 近年、「外来種」という言葉を耳にする機会が多々あると思います。「外来種」は、人為的に外国から持ち込まれた種である「国外外来種」、国内他地域から持ち込まれた種である「国内外来種」に分けられます。
 北海道における「国外外来種」はアライグマ(哺乳類)が有名です。近年、急速に道内全域へ分布を拡大させており、農業等被害の増大や生態系への影響が懸念されています。本種は平成17年6月に施行された「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)」にて特定外来生物に指定されており、①輸入②飼養や運搬③野外に放つこと等、扱いについて厳しく規制されています。
 

 一方、北海道における「国内外来種」としては、札幌近郊の河川で春先から夏場によく見られるトノサマガエル(両生類)が挙げられます。学校教材として静岡県産の個体が持ち込まれたのが最初と考えられており、初目撃例は1990年代でした。その他にも、カエルの国内外来種としては、アズマヒキガエル(ニホンヒキガエル)、トウキョウダルマガエル(ダルマガエル)、ツチガエルが挙げられます。
 元来、北海道におけるカエルの在来種はエゾアカガエル、ニホンアマガエルの2種のみでした。両種は上記国内外来種と比較して体格が小さく、同環境で生存競争した場合に負けてしまう可能性があります。また、国内外来種の感染症「カエルツボカビ」が  道内在来種に蔓延し、生存に大きな影響を与える可能性があります。さらには、トノサマガエルがオオコオイムシやゲンゴロウ(昆虫類)、モノアラガイ(貝類)等の道内希少種を捕食しているとの報告もあります。
 このように、北海道の生態系に悪影響を引き起こすと考えられている国内外来種のトノサマガエルですが、本来の生息地である本州では年々個体数が減少しており、最新の環境省レッドリストで「準絶滅危惧種」に指定されている状態です。「所変われば扱い変わる」ですね…
 前述した「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)」ではアライグマのような国外外来種が対象であり、トノサマガエルのような国内外来種は対象外となります。つまり、国内外来種の定着や分布拡大に対する有効な規制がない状態です。こうした中、平成22年の生物多様性条約第10回締約国会議で採択された「愛知目標」の達成に資するため、特定外来種だけでなく、国内外来種も含めた防除・対策に関する「外来種被害防止行動計画」の策定が環境省によって進められており、今後の外来種対策に大いに貢献することが期待されています。
 生物が元々の環境で生息できる条件を整えること、且つ他地域への侵入を食い止めることが生態系の健全な維持にとって非常に重要なことです。当社は、環境ナビゲーターとして最新の情報収集・技術研鑽に努め、生態系保全に関する課題に積極的に取り組んでいきたいと考えております。
 

 

<参考文献>
“環境省 自然環境局 外来生物法”.< http://www.env.go.jp/nature/intro/>
“北海道ブルーリスト 2010”.< http://bluelist.ies.hro.or.jp/>
“侵入生物データベース”.国立研究法人国立環境研究所.< https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/>
更科美帆・義久侑平・吉田剛司. 札幌市の都市緑地に生息する国内外来種トノサマガエル(Rana nigromaculata)が捕食した動物について. 酪農学園大学紀要 36 (1) :81~86. 2011.

 

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