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エコニュースVol.264

2015年06月01日

<バイオレメディエーションシリーズ Part4>

微生物と燃料電池

株式会社エコニクス 環境事業部
生活環境チーム 宮前 知代

 近年、地球環境問題の解決のために様々な取り組みが模索されてきていますが、その中でもエネルギーという枠組みの中で生まれた「微生物燃料電池」という言葉を皆さんはご存知でしょうか。名前の通り、微生物の代謝によって電気が発生する仕組みを人間が発電装置として活用しようというものです。
 微生物に限らず、生き物は全てエネルギーを利用して生活しています。私たち人間の場合、体内に取り込んだ食物(有機物)を分解する過程で放出される電子を酸素に渡すことで、最終的にエネルギーを得ています。多くの微生物も同様ですが、電子を直接電極に渡すことでエネルギーを得ることができる微生物、電流発生菌というものが存在しているのです。
 最も有名な電流発生菌の一つに「シュワネラ菌」という菌がいます。シュワネラ菌は海底火山付近で発見されましたが、水田土壌にも多くの電流発生菌がいることがわかってきています。シュワネラ菌を含む培地(100ml)に有機物を加えた発電装置では、0.3W程度の発電を行うことが可能です。これは、同じ体積で実用化されている燃料電池等と比較すると10~100分の1ほどの発電効率ではありますが、発電量としては携帯音楽プレーヤーで音楽が聴けるレベルなのです。


 電流発生菌の可能性は発電のみにとどまりません。浄化槽の排水処理への活用も考えられているのです。廃水処理施設で多く用いられている活性汚泥法では、汚水に空気を入れ込み、酸素を必要とする好気性の微生物を育てて有機物を分解させますが、この空気を入れ込む「曝気」には大きな電力が必要です。加えて有機物分解で得たエネルギーをもとに微生物自体も増加するため、最終的に沈殿除去を行い下水汚泥として大量に廃棄処理しなければならないという問題があります。しかし微生物燃料電池と組み合わせ活性汚泥槽を燃料電池とすることで、曝気の代わりに電極を使うため消費電力は縮減され、エネルギーの一部を電気として取り出すため微生物の発生が抑制されて下水汚泥の量も減少し、かつ発電した電気も利用できるというとても環境にやさしい仕組みが考えられています。
 身近なところにいる微生物に学ぶ環境保全、自然の持っている可能性の大きさについて考えさせられます。私たちはこのような微生物も含め、多種多様な生物と共存していく環境を守ることを目指して日々努力していきたいと考えております。

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