エコニュース

  • エコニュース
  • 藻場通信
  • エコ森林通信
  • 洋上風力通信

エコニュースVol.167

2007年05月01日

<陸の生き物シリーズ Part9>

10mmが背負った3億年

株式会社エコニクス 環境事業部
陸域環境チーム 前河 栄二

 昆虫綱 カゲロウ目のカゲロウ類は、幼虫時代を河川や湖などの水域で過ごした後、その多くの種が4~5月頃に羽化し成虫となることから、英名では『Mayfly』と言います。成虫としての寿命が数時間から数日と短いことや、飛翔する姿が弱々しいことなどから、日本だけではなく世界的にも弱く儚いものの代表としてあつかわれています。カゲロウ目の学名である『Ephemeroptera』の『Ephemero』とは、ギリシャ語の『Ephemeron(一日だけの命)』からきており、やはり成虫の寿命が短いことが由来となっています。
 春季または秋季に羽化した成虫は、何も食べずに交尾と産卵を行い、数時間から数日の間に死んでしまいます。そうしてその時に産みつけられた卵は、通常1~3週間程度で孵化し幼虫になり、幼虫は脱皮を繰り返し半年から1年ほどで成虫となります。
 幼虫は体形を変化させ、様々な生息環境に適応し生息域を広げてきました。しかし、多くの種は清冽な水質を好んで生息するため、水質の悪化や環境の改変による影響を強く受け、生息数なども大きく増減を示します。
弱く儚いものの代表とされるカゲロウですが、地球上に出現したのは3億6700万年前の古生代石炭紀と考えられており、翅のある昆虫のなかでは最も古い種の一つとされています。
 そんな、3億年も前から生き続けてきたカゲロウも、現在、人間生活による水質の悪化や河川改修などによる影響を受け、その生息域を減少させています。人間の世界では『最近の若いもんは!』なんて発言が度々聞かれますが、我々人類のはるか昔から生きているカゲロウたちは、我々人間に対し『最近の若い生き物は、俺達年長者に対する礼儀がなっとらん!』なんて思っているかもしれません。
 魚類の餌となり水域の食物連鎖を支え、水質の浄化にも一役買っているカゲロウたち。5月、頼りなく飛ぶ彼らの姿も、その生態や歴史を知ることで、少しだけ違って見えてくるのではないでしょうか。
 カゲロウは、夜間に河川近くのコンビニエンスストアの照明や自動販売機の灯りにも集まってくることから、目にすることも多いかと思います。機会がありましたら、彼らの透き通った美しい翅や、細く長く延びた尾毛、キラキラっと飛ぶ姿を一度ご覧下さい。

もどる