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エコニュースVol.168

2007年06月01日

<陸の生き物シリーズ Part10>

川のこと・・・

株式会社エコニクス
環境事業部 陸域環境チーム 前河 栄二

 私は「前河栄二(まえかわえいじ)」という名前なのですが、その名の通り小学校5年生まで住んでいました家の前には、川が流れていました。その川の名は「厚別川(あつべつがわ)」と言い、札幌市と江別市を流れる豊平川の支流です。
 厚別川は川幅約4~5m、水深10~60cm程の川で、降雨時などには水が濁ることがあったものの、普段は川の水も澄んでおり、スナヤツメやドジョウ類、ウグイ類が生息していました。また、河岸にはヤナギの河畔林の他、様々な草花も生育し、春になればチョウが舞い、夏から秋にかけては1,000匹を優に超えるトンボの集団が空を覆い、草陰ではキリギリスやスズムシがうるさいくらいに鳴いていました。

 小学生の私は、毎日のように厚別川で遊び、川で魚を獲ったり、虫を捕まえたり、堤防上のサイクリングロードを自転車で走ったり。厚別川は、私にとって最も身近な自然だったのです。
 私が小学校低学年の頃だったと思いますが、厚別川は大雨により増水し、茶色く濁った水が高水敷まで溢れ、上流からは大きなごみや倒木が流されてきました。あっという間に増水し、普段と全く異なる厚別川を堤防上から見ていた私は、そこで自然の怖さも知ったように思います。
 大人になった私は、エコニクスに入社し、河川のあらゆる調査を業務内容とする河川グループに配属となり、北海道内の多数の河川を見る機会に恵まれました。清く澄んだ水が流れる川に行くとなんだか心癒され、ヤマメやアメマスが獲れるとワクワクし、思いがけず深みにはまった時にはドキッとしたり、今では北海道の河川が自然豊かであることに関心させられる毎日です。
 また、調査に行った川では、サケやサクラマスの遡上と産卵を目にすることもあります。子孫を残すため、遠い海から必死になって遡上してきたサケやサクラマスが、体中傷つきながら川底に穴を掘り、卵を産み付けている姿を初めて目にしたときは、本当に感動したことを今でも覚えています。ただ、サクラマスが遡上してくるような河川は、ヒグマの生息域にもなっていたりし、調査中にヒグマの足跡を見つけたときや笹薮でガサガサっという物音が聞こえたときは、冷や汗ものです。
 その他にも川原で二枚貝の化石を発見したりなど、川では日々新しい発見がみられ、フィールドが私の先生なのです。
 


遡上中のシロザケ


ヒグマの足跡


二枚貝の化石


トノサマバッタの夫婦

 平成2年に「多自然型川づくり実施要領」が策定され、多自然型川づくりが進められてきました。国土交通省では、その現状を検討し、多自然川づくりの新たな展開を図るべく平成18年に「多自然川づくり基本指針」が定められました。基本指針の中では「『多自然川づくり』とは、河川全体の自然の営みを視野に入れ、地域の暮らしや歴史・文化との調和にも配慮し、河川が本来有している生物の生息・生育・繁殖環境及び多様な河川景観を保全・創出するために、河川管理を行うことをいう。」と定義しています。
 この基本指針に従い、実際に河川管理をしていくには、まだまだ多くの課題が残されていますが、今の子供たちやそのまた子供たちにとっても身近な自然として存在し、様々な体験の場であり続けて欲しいと思います。

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