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2023年09月25日

藻場通信 vol.33

海藻を食べる生き物

自然環境部 海域担当チーム
工藤 俊樹

 今夏、北海道周辺では記録的な高水温が観測され、海洋熱波(数日から数年にかけて急激に海水温が上昇する現象)が発生していると見られています。海洋熱波は2010~2016年、2021年に発生しており、2010~2016年の北海道・東北沖の海洋熱波は黒潮由来の暖水渦が、2021年の道東沖の海洋熱波は気象条件が原因と考えられています。2010~2016年のように暖水渦の勢力が強まると暖水性の魚種が北方に進出するようになり、宮城県沖ではタチウオやアイゴの増加が報告されています。中でもアイゴは、海藻を食べる植食性の魚で、磯焼け対策として駆除が行われている地域もあります。今回は、道内の藻場調査時によく見られる植食性動物を紹介します。

 

 
写真1 (左)流れ藻(ワカメ)に群がるキタムラサキウニ、(右)ロープを登るキタムラサキウニ

 

 最も目につくのがキタムラサキウニです。磯焼けを引き起こす代表的な生物で、コンブやワカメの流れ藻に群がる様子から嗜好性の高さが窺えます(写真1左)。細いロープに登ることもでき(写真1右)、海が穏やかな時はVol.21にて紹介しましたウニフェンスを登る様子も観察されます。

 植食性の軟体動物では、コシダカガンガラやエゾサンショウ等の小型巻貝(写真2)が高密度で見られることがあります。また、エゾアワビ(写真3左)やアメフラシ(写真3右)が海藻を摂餌している姿も潜水調査中にしばしば見られます。

 


写真2 食害を受けたコンブ葉状部と小型巻貝

 

 
写真3 (左)エゾアワビ、(右)産卵中のアメフラシ

 

 北海道周辺では、アイゴ等の植食性の魚はまだ見られませんが、これらの植食性動物の分布を把握することは藻場造成の適切な方法を考える上で重要となります。

 

参考文献

黒潮親潮ウォッチ
https://www.jamstec.go.jp/aplinfo/kowatch/?p=12842

国立研究開発法人海洋研究開発機構
https://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20210114/

矢野泰隆(2022)2021年夏季の道東海域における水温変動について, JAFIC テクニカルレビュー, No.1.

三浦瑠菜・増田義男(2022)宮城県におけるアイゴの来遊について, 宮城水産研報, 第22号.

 

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