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エコニュースVol.371

2024年05月01日

夕日が赤いのは空が汚れているから?

株式会社エコニクス 電力環境部
生活環境担当チーム 中山 英雄

 

 「夕焼け空や朝焼け空が赤いのは、太陽光が大気層を通過して人の目に届くまでの距離が長いから」というのは知られています。詳しくは、「大気中に浮遊する微粒子に太陽光がぶつかると散乱され、人の目に届くのは散乱されにくい赤い光が多く残るから」です。それでは、空が汚れていた方が夕焼けや朝焼けは美しい赤色になるのか?いえ、そうではありません。大量の黄砂が飛来して空気が汚れた日の札幌の朝焼けは、モヤっとした薄い黄色の空で、「美しい」とは呼べるものではありませんでした。
 


2021年5月に黄砂が飛来した時の札幌の朝焼け

 

 夕日や朝日を美しい赤色にする「微粒子」は、黄砂よりはるかに小さい空気の分子(酸素や窒素)です。これらによる太陽光の散乱はレイリー散乱と呼ばれます。一方、黄砂などのPM2.5、または雲粒(霧)などによる散乱はミー散乱と呼ばれ、散乱の度合いは光の色の違いに依存しません。したがって、空は全ての色が混ざった白色が強くなります。黄砂が飛来した日の空が白っぽく、モヤっとしているのはこのためです。やはり、澄んだきれいな空気の方が、美しい赤色の夕焼けや朝焼けとなるのです。雨や雪で空気中の埃が洗い落とされた後の夕焼け(または朝焼け)は、特に美しいものとなります。

 


2023年6月雨上がりの札幌の朝焼け

 

 夕焼けや朝焼けの他にも、空を染める現象があります。かつて、冬の朝にしばしば目にました。街が黄色い空気に覆われるのです。これは温度逆転層が形成されることにより発生します。通常であれば、大気層では高度の上昇に伴い気温が低下しますが、逆転層の中では逆に、高度の上昇に伴い気温も上昇します。一般に排気ガスなどの高温ガスは外気より密度が小さいため、浮力により上昇します。上昇している間に排気ガスは冷めていきますが、通常であれば上空に行くほど外気温も下がっていくため、浮力は生じ続けます。しかし、逆転層では上空に行くほど外気温が上がりますので、早い段階で排気ガスは浮力を失い、地表付近へと戻ってきます。このようにして、地表付近に大気汚染物質が溜まってしまうのです。逆転層の成因はいくつかあります。寒冷前線の通過に伴い下層に寒気が入り込む前線性逆転、高気圧内で空気の下降により気温が断熱上昇する沈降性逆転、晴れた夜から朝にかけて放射冷却によって地表面が冷却され、それに接する空気の温度が低くなるために発生する放射性逆転(接地逆転)などです。冬の早朝に札幌の空を黄色く染めた原因はおそらく放射性逆転によるものです。なぜ黄色?それは大気汚染物質の二酸化窒素の仕業です。夜間に家庭等の暖房器具や、除排雪作業を行う重機等からの排気ガスに含まれる一酸化窒素が酸化して二酸化窒素が生成され、逆転層の中で滞留してしまったのです。二酸化窒素は赤褐色の気体ですが、これが空気中に拡散されることによって希釈され、大気が黄色く見えたものと考えられます。


 

2022年1月放射性逆転が発生していると思われる札幌の空
昔に比べ黄色味は僅かです。

 このような空がよく見られたのはひと昔前まで、近年はディーゼル自動車の排気ガス規制などにより、大気中の二酸化窒素濃度が高くなることは少なくなりました。二酸化窒素をはじめとした大気汚染物質濃度の現況は、環境省大気汚染物質広域監視システム(そらまめくん)で確認できます。私が幼い頃はきっと、排気ガスや車粉で今より空が濁っていたと思います。黄砂の飛来については対処出来ませんが、排気ガス由来の汚染物質は法規制や技術革新により今後も排出量が減少していく筈です。澄んだ空が見られる時代がいつまでも続くことを期待しましょう。

 

2023年9月札幌の澄み渡る青空

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