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エコニュースVol.356

2023年02月01日

オープンデータの活用について

株式会社エコニクス 環境技術部
解析担当T 三津橋 純奈

 弊社は、環境の専門家として水質、騒音振動、植物・動物、生態系など、幅広く環境調査を実施しております。
 環境調査では実際に現地に足を運び、現地調査を行いながらデータを収集し、その後は会社に戻り整理・解析を行います。
 整理・解析した結果を元に、自然環境や社会環境への影響を把握し、影響の回避、最小化、修正、低減および代償といった保全措置について提案をいたします。
 現地調査後に行う整理・解析のひとつの方法として、弊社ではGISを活用しています。
 GISでは、様々なデータを整理、管理、解析することができ、数多くのデータを重ね合わせることはもちろんのこと、条件を元にデータの抽出や結合、演算など、多種多様な関係を調べることができます。
 これらの機能を利用し、現地調査で収集したデータ(ポイント・ライン・エリア)について、図化や空間解析を行います。
 図化する際には、位置情報を視覚的にわかりやすくするため、背景図として地図や衛星画像などを使用します。
 また、空間解析時に現地調査データのみでは不足する場合、その他のデータも合わせて使用します。用いるデータは用途や目的によって変わりますが、オープンデータ(一般に公開されているデータ)を活用しています。
 オープンデータは、環境省や国土交通省などの国が公開しているもの、地方自治体が公開しているもの、研究機関や大学などが公開しているものなど数多くあります。
 データの形式も、シェープファイル形式やGML形式、KML/KMZ形式などの地理空間情報を含むものから、CSV形式のようなテキストファイルなど様々です。

 以下に弊社でもよく活用するオープンデータについて示します。

サイト 内容 公開データ 注意点や便利点
ESRI 全国の市区町村界データをシェープファイルでダウンロードできます。 市区町村界など 各市区町村の人口や世帯数もわかります。
国土数値情報※ 全国の国土に関する基礎的な情報をシェープファイルでダウンロードできます。 土地利用
河川
公共施設 など
データによっては、属性テーブルの内容がコード化されているので、整理する必要があります。
生物多様性センター※ 全国の自然環境保全基礎調査のデータをシェープファイルでダウンロードできます。 現存植生図
特定植物群落 など
現存植生図のデータをよく利用します。
基盤地図情報※ 全国の電子地図における位置の基準となる情報をGMLでダウンロードできます。 道路縁
建築物の外周線
海岸線
数値標高モデル など
シェープファイルにするには変換処理が必要です。
国土調査(土地分類調査・水調査) 全国の土地分類調査のデータをシェープファイルでダウンロードできます。 地形分類図
表層地質図
土壌図 など
使用する際は、座標系を指定する必要があります。
環境アセスメントデータベースEADAS※ 全国の自然環境、社会環境に関する情報をCSVなどでダウンロードできます。 動植物の分布
地形地質の状況
防災関連情報 など
よく動植物の分布情報を利用します。
地理院地図※ 国土地理院の地図や空中写真を使用できます。 標準地図
年代別空中写真 など
レイヤーとしてすぐに使用できます。図面などで使用する際は、出典の表記が必要です。
ArcGISOnline
ベースマップ  
ベクターベースマップとラスターベースマップを使用できます。 衛星画像
道路地図
地形図 など
ベースマップの追加ですぐに使用できます。
再生可能エネルギー情報提供システム[REPOS]※ 全国の風況マップをシェープファイルでダウンロードできます。 風況マップ
(陸上、洋上)
陸上については、市町村単位でダウンロードできます。

※サイトではWebGISシステムが構築されており、各種データを確認することができます。

 次に実際にGISを利用して、現地調査で収集したデータとオープンデータを重ねて作成した藻場分布状況図を以下に示します。
 コンブの長さデータは、計量魚群探知機を用いた藻場調査にてデータを収集し、GISを利用して整理・解析を行い、確認範囲内のコンブの長さ別に分布を推定しました。
 海藻藻場のデータは、生物多様性センターにて公開されている自然環境保全基礎調査(藻場調査 2018-2020年)の結果を使用しました。
 底質および等深線は、印刷物である漁場図を弊社でデジタル化しました。
オープンデータの海藻藻場データを重ねることで、現地調査では確認を行っていない範囲の海藻の分布状況を把握することができ、海域全体の状況がよくわかりました。
 また、海藻藻場データにくらべて現地調査の方がより水深が深いところまでコンブの分布状況を把握できていることがわかりました。海藻藻場データは衛星画像から判読して作成していることから、水深が深くなるにつれ判読が難しくなることが理由の1つかもしれません。
 現地調査により得られたコンブの長さ別分布データを用い、これらのコンブが1年間に吸収するCO2吸収量が概算でどの程度あるか、文献を参考にGISを用いて計算を行ってみたところ、約100トン/年のCO2吸収量があると試算され、同面積のスギ人工林以上の吸収能力があることがわかりました。
 

図 藻場分布状況図

 2021年9月にデジタル庁が発足し、2022年6月には「デジタル社会の実現に向けた重点計画」が閣議決定されたことから、今後は更にオープンデータ化が促進されていくことが予想されます。
 オープンデータ化が促進されると、誰もが自由にデータを利用できるようになるため、安価に、そして容易に活用することができ、活用の幅もどんどん広がって行きます。
 現地調査から得られたデータに加え、オープンデータを上手に活用しながら、今後も顧客ニーズに応えた成果を提供していきたいと考えています。

 

●参考サイト
無償で使えるGISデータ/マップ
https://www.esrij.com/gis-guide/other-dataformat/free-gis-data/
デジタル社会の実現に向けた重点計画
https://www.digital.go.jp/policies/priority-policy-program/

●参考文献
浅海生態系における年間二酸化炭素吸収量の全国推計
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kaigan/75/1/75_10/_article/-char/ja/

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