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エコニュースVol.349

2022年07月01日

タツノオトシゴってこんな魚

株式会社エコニクス 電力環境部
火力発電所担当チーム 長嶋 和哉

 

 今回は水族館で影の人気者「タツノオトシゴ」についてのお話です。

 タツノオトシゴ(竜の落とし子、Seahorse)は、トゲウオ目ヨウジウオ科タツノオトシゴ属に属する魚類の総称であり、単一種の標準和名でもあります(以降、「タツノオトシゴ」は総称としてのタツノオトシゴとして使用します)。タツノオトシゴは主に熱帯から温帯の浅海や内湾の岩礁域、あるいは海藻草類が繁茂する藻場に棲息しています。食性は肉食性で、魚卵や小魚、ヨコエビ類、アミ類、あるいは動物プランクトンなど微小な甲殻類を主な餌として捕食しています。

 

タツノオトシゴの一種(沼津港深海水族館にて筆者撮影)

 

 タツノオトシゴの生態の中で一番の特徴は繁殖行動にあります。タツノオトシゴの雄は腹部に卵を収納するためのスペース(育児嚢)を有しています。雌はこの育児嚢に卵を産み、雄は卵が孵化して稚魚になるまでの2~6週間もの期間、保育をし続けます。他の魚類には見ることのないこの繁殖方法の特殊性からタツノオトシゴは、恋愛成就、夫婦円満、安産祈願、幸運や子宝のシンボルとして人々に愛されています。

 このように人々に愛されているタツノオトシゴですが、現在絶滅の危機に瀕しています。その原因は地球温暖化による海水温上昇に伴う生息域の減少や漁労活動による乱獲といったものがあります。またタツノオトシゴは、泳ぎが下手で動きが遅いために捕らえやすいことも考えられます。

 人気の高い観賞魚として、また、安産のお守りとして、漢方薬の材料として乱獲されていた経緯もありましたが、タツノオトシゴは絶滅が危惧されることから、現在「ワシントン条約」により国際取引が制限されています。そのため、近年では種の保全の観点からお守りには実物ではなく、タツノオトシゴを模したアイテムを代用することが多くなっています。それでも根本的な生息域の減少や乱獲による資源量の減少といった事象を改善しなければ、タツノオトシゴの資源量の回復の見込みは少ないのが現状と考えます。

 弊社にはタツノオトシゴに限らず、海の生き物の生態に詳しい人財が多く在籍しています。多様な種を残し、豊かな自然環境を守るためには、生き物の生態の理解が必要と考えます。海に関わる人とも、海とは縁遠い人とも対話を行い、SDGs17の目標の一つである『海の豊かさを守ろう』に、我々は全力を尽くしていきます。

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