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エコニュースVol.316

2019年10月01日

北海道のホタテ漁業の課題について

株式会社エコニクス 環境戦略部
事業企画チーム 伊藤 尚久


 周囲を3つの海に囲まれている北海道は、ホタテガイ、サケ、コンブ等の豊富な水産資源を有しており、全国の約2割の生産量を維持しながら、日本の食生活を支えています。その中でも、北海道における生産量全体の約3割を占めるホタテガイは、海外への輸出額が道産食品の半分を占めており、北海道漁業の中核を担っています。

図 北海道の魚種別生産量と生産額(H29属地)
出典:「平成30年度水産業・漁村の動向等に関する年次報告」の概要
(令和元年6月北海道水産林務部)


 北海道のホタテガイ漁は、大きく分けて「地撒き式」と「垂下式」の2種類の方式に分けられます。


 「地撒き式」は主にオホーツク海や根室海峡地区で採用されています。生後から1年間育てた稚貝を海底に放流して2~4年間成長させてから漁獲します。水揚げの最盛期は初夏から秋、主にほたて貝柱や干貝柱として産地加工されています。

 また、「垂下式」は主に噴火湾や日本海で採用されています。稚貝をロープに吊るしたり、かごに入れて海中に吊るし、1~2年間成長させてから漁獲します。冬から春にかけて水揚げされることが多く、主にボイルほたて、剥き身ほたてなどに加工され、出荷されています。

 近年、ホタテガイ主産地である噴火湾において、養殖中の個体が大量死する現象が発生しています。特に今期(2018年10月~2019年5月)については、水揚げ量が昨期の3分の1程度にまで大幅減産となったため、新聞・テレビニュース等で大きく取り上げられました。被害はロープに吊るす前の稚貝にも及んでおり、来期以降も減産が続く可能性が高いことから、今後の漁業経営に対する懸念が非常に強まっています。

 噴火湾におけるホタテガイの大量死は過去にも数回発生しており、北海道や道立総合研究機構函館水試では、その要因を解明するための調査を過年度から継続的に実施しています。そして、近年の大量死に関わる重要な要素の基本的な考え方として、①気象・海洋環境、②貝の健康状態、③養殖管理の方法、をあげています。また、ホタテガイの生態を踏まえ、採苗から本養成までの各養殖工程において、障害やストレスの抑制と生育の助長に特に留意することが必要と提唱しています。

 なお、今年の2月、北海道は噴火湾養殖ホタテガイの生産回復に向けた対策を検討するため、「噴火湾養殖ホタテガイへい死対策会議」を設置しました。これを受け、対策会議で実施する調査の結果や各作業工程の注意点、トピックス的な情報が「噴火湾養殖ホタテガイ対策だより」として配信されることになりました。その第1号(8月5日発行)では、対策会議の概要、へい死抑制対策の取り組み、7月17日に実施した密度および時期別飼育試験について紹介されています。

 北海道におけるホタテガイ漁は、今や日本の水産業を支える大黒柱といっても過言ではありません。創業から半世紀近く、北海道の海を「見る」「知る」ことに携わってきた当社は、こうしたホタテガイの生産回復に向けた対策の一助となるべく、今後もより一層の技術研究・開発に努めてまいります。

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