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エコニュースVol.152

2006年02月01日

環境問題シリーズ Part9・煙草と環境 その1

煙草は環境汚染物質

株式会社エコニクス 
 環境事業部  技術顧問 大橋 弘士

 米カリフォルニア州大気汚染資源局は26日、米国で初めて煙草の煙を「有毒大気汚染物質」に指定しました。間接喫煙による煙草の害を認めたものです。同州は今後、喫煙規制の強化の検討に入り、公園やビーチなどの屋外の公共の場所や、子どもが同乗する自動車内などが禁煙になる可能性があります。同州は1990年代に全米で初めて職場での喫煙を禁止するなど常に喫煙規制の先頭に立ってきましたが、今回の決定で、同様の動きが他の州に広がる可能性もあると見られています。日本でも同様な動きが出てきてしかるべきものと思います。

 煙草に含まれている主成分のニコチンは、成人でもわずか60ミリグラムを急激に接取すれば死ぬという恐ろしい有毒化学物質です。喫煙で吸い込む煙草の煙の中には4000種以上の化学物質が含まれ、そのうちの200種以上が人体に有害な化学物質だといわれています。喫煙の害はさまざまですが、その一つが寿命の短縮です。環境汚染化学物質について寿命の短縮に寄与しているものを、重大さの順に挙げてみますと、喫煙(全死因:数年~十数年)、がん(約3年)、受動喫煙(虚血性心疾患:120日)、ディーゼル粒子(推定上限値:58日)、ホルムアルデヒド(4.1日)、ダイオキシン類(1.3日)、カドミウム(0.87日)、ヒ素(0.62日)・・・というように、環境汚染化学物質の中では、煙草が群を抜いて上位にランクされています。タバコの害は愛煙家が考えるよりもはるかに深刻なことが分かります。煙草を止めるだけで数年から十数年(平均で約6.7年)の良質の時間をゲットできるということです。

  国立がんセンターの全国調査では、がん全体の発生リスクは、男性で煙草を吸うグループでは、吸ったことがないグループに対し1.6倍となっています。100人のうち吸ったことがないグループでは20人ががんになるのに対して、煙草を吸うグループでは32人ががんになるということです。臓器別で見ると、例えば肺がんについては男性で4.5倍、女性で4.2倍です。日本全体の統計データをもとに、もしも煙草を吸っていなければがんにならなかった男性は年間8万人、女性は約8000人となると計算されています。がんに対する煙草の害が極めて大きく、がんにとってこれほど影響の大きい環境因子は他には考えられないと結論しています。喫煙の害はがんだけとは限りません。米国の調査では、肺がんの80%、心臓疾患の30%、慢性の肺疾患の80%が喫煙によるもので、煙草が原因で寿命をまっとうできなかった死者の割合は全死者の約20%と結論されています。煙草は万病の元と考えた方が良さそうです。しかも喫煙が大気汚染の原因と認定されたとなれば、禁煙は個人の健康増進と寿命延長に貢献するほか、地球上生物の共通の生存基盤である大気環境の保全にも貢献できることになるのです。

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