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エコニュースVol.179

2008年05月01日

<地球環境シリーズ Part6>

安価な衛星画像提供による今後への期待

株式会社エコニクス
環境事業部 水域モニタリングチーム 宇津井 昂平

 地理情報システム(GIS, Geographic Information System) は、コンピュータ上に地図情報やさまざまな付加情報を持ったデータを作成、保存、管理し、視覚的に表示する機能を持ったシステムです。人工衛星、航空機、 現地踏査などから得られたデータを、生態系の変化の把握や土地、建物、道路などの都市計画などに利用されています。
 さて、GISで使用される画像は広域なデータである利点から人工衛星で撮影された画像が使用されることが多いのです が、一昔前の衛星写真は解像度が粗く、建築物の状態や樹種の判別など、詳細なデータを取得したいというニーズには応えられない性能でした。しかし、 2000年には世界初の1m解像度を実現したIKONOS衛星の運用が開始されました。しかしコスト面に難点を抱えており、研究開発以外での利用がされて いるとは言い難い状況であったようです。
 そんな中、日本で開発され、2006年1月24日に打ち上げられた地球観測衛星「だいち」の画像価格は10 km2あたり50,000円の水準まで下がりました。加えて「だいち」には、高精度で標高抽出を行うためのパンクロマチック立体視センサ(PRISM)、 土地被覆の観測を高精度に行うための高性能可視近赤外放射計2型(AVNIR-2)、および昼夜や天候によらず陸域観測が可能なフェーズドアレイ方式Lバ ンド合成開口レーダ(PALSAR)の3つの地球観測センサを搭載しており、解像度は2.5mと非常に詳細な情報が得られるとのことです。
 ちなみに最もよく利用されている地球観測衛星として、NASAが打ち上げた「ランドサット」という衛星があります。 1972年に1号機が打ち上げられ、解像度は80mでした。その後、1984年に打ち上げた5号機の30m、1999年に打ち上げた7号機の15mまで解 像度が上がりました。※1
 その解像度の変遷から技術の進歩が伺えます。
 アメリカの気候変動対応プロジェクトで「だいち」の画像は森林伐採の監視やサンゴ礁の減退状況の把握など様々な目的で観測が行われ、政策決定の情報として使用されるそうです。また、行政、研究機関以外にも民間でも積極的に利用しようという動きが強まっています。
 広範囲を安価で撮影できる衛星写真。近い将来には1m以下の解像度を持った写真が無償で手に入る時代が訪れるかもしれません。そうなると現地踏査の大部分が衛星画像による分析で行われる。ということになるかもしれません。

   
画像提供 JAXAHP

※1ランドサットの画像は米国メリーランド大学のHPから無償でダウンロードすることができます。

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