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エコニュースVol.112

2002年10月01日

トドシリーズ Part2・北海道におけるトドの生態と漁業被害 その2

「減」「小」している世界のトド~環境の影響を受けるトド~

株式会社エコニクス
 環境事業部 磯野 岳臣

 世界的にトドの生息数を見ると、1960年の25万頭から1990年の9万頭まで、約64%が減少したと報告されています。北海道への来遊起源である千島列島での個体数調査は、ロシア研究者らによって1950年代頃から本格的に始められ、1970年代を中心に大きく減少したことが報告されています(図)。1990年以降は低位で横ばい状態となり、昨年2001年の調査では、パップ(新生仔)が約1,900頭、パップ以外が約4,900頭確認されています。

 このような世界的な減少傾向の要因は、現段階でも明確な要因は出されていませんが、餌資源の量的・質的変化に起因する要因、混獲などの人的要因などが考えられています。むしろ要因は一つではなく、複数が絡み合った結果と考えるのが妥当なのかもしれません。

 
千歳列島増殖場5ヶ所における
   パップ(新生仔)を除いた個体数の推移 (Burkanov2001より)

 海洋生態系の中で高次捕食者に位置するトドは、これより低次の魚類を含めた、生息環境全体の影響を強く受ける動物であることも分かってきました。主要な餌生物であるスケトウダラ資源量の多いときは、トドの成長もよく、頭骨などでサイズの増加が見られていますし、バイオマスは変わらなくとも、スケトウダラが若令魚中心になったときには、体長や体重が減少していることも報告されています。スケトウダラ加入量の増減が水温に起因することから、トドは間接的に水温の影響を受けているとも言えるのです。

 
(磯野 2000より)

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