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エコニュースVol.216

2011年06月01日

<陸の生き物シリーズ Part13>

見る気にならないと見えないもの

株式会社エコニクス
環境事業部 陸域環境チーム 前田 由香

 ピンク色のカタクリ、青色のエゾエンゴサク、紫色のエンレイソウ、白色のミズバショウ…(写真1)。春は、暖かい陽気とともに、美しい春植物の饗宴を楽しむことができます。



写真1 (左上から)カタクリ、エゾエンゴサク群落、エンレイソウ、ミズバショウ群落

 4月の初め、そんな美しい春植物を見ることを楽しみにしつつ、道北方面の現場へ向けて車を走らせていた時のことです。流れる風景は、まだ雪が残る春の冬枯れの森が続いていました。その寂しげな春の冬枯れの森の中にふと目が止まりました。赤い樹木がひと際目立っていたのです(写真2)。


写真2 春の冬枯れの森の中で赤色が際立つカツラ

 春には冬枯れている森、つまり落葉広葉樹林は、特に、秋の鮮やかな紅葉によってそれぞれの樹木の個性が発揮されます。しかし、春にもしっかりと樹木の個性が発揮されていたのです。その赤い樹木に近づいてみると、その正体はカツラ(カツラ科)でした。カツラの花には花びらはありませんが、赤い雌しべがとても鮮やかです(写真3)。


写真3 カツラの花(赤い細長い部分)

 風景の中では、よく見ないと見落としてしまうような地味な色合いです。しかし、一度気付くと、いくつもの場所にカツラの木があり、風景の中に確かな色合いを持って抜群の個性を発揮していました。カツラは雄しべも赤く目立ちます。花だけでなくこれらを包む鱗片、そして新葉も赤色になり木を赤く染めます。 
 カツラと同じように、よく見ると個性を発揮している植物が他にもあります。カエデの仲間は、紅葉がとてもきれいなので、葉を見たことがある方は多いのではないかと思いますが、花をお見せしたいと思います。まずは、ハウチワカエデ(カエデ科)です(写真4)。


  写真4 ハウチワカエデの花(赤く吊り下がる部分)

 ハウチワカエデは、秋には真っ赤に紅葉し、春には小さな赤い花を咲かせます。次に、アカイタヤ(カエデ科)です(写真5)。アカイタヤは、秋には黄色に紅葉し、春には小さな黄色い花を咲かせます。両者とも、風景の中では新葉なのか花なのか気にも留められない花々です。しかし、注目してみると結構派手なかわいらしい花を咲かせながら、淡々と毎年の営みを繰り返しています。(写真5)


写真5 アカイタヤの花(黄色)と新葉(赤色)

 そして、季節が進むと、これらのご紹介した木々とその他にもそれぞれ特色のある若葉や花が、「春紅葉」と呼ばれる美しい色彩となって森を彩ります(写真6)。茶色味を帯びた樹木はアカイタヤです。葉の赤色に花の黄色が混じって茶色味を帯びて見えます。黄色はエゾイタヤの新葉と花、黄緑色はシラカンバの若葉の色です。この頃のシラカンバの花は雄花が落ちて雌花が大きく育ち始めています。桜やこぶしなど大きな花びらをつける木々とは異なり、目立つことがない木々の花も多いのですが、この風景の中にはたくさんの木々の花が隠れています。


写真6 春紅葉

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