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エコニュースVol.217

2011年07月01日

<陸の生き物シリーズ Part14>

環境調査とGIS ~植生図ができるまで~

株式会社エコニクス
環境事業部 陸域環境チーム 高松 純奈

 植生図とは、植物の分布を地図上に表したものです(図1)。
 日本は北から南に約3000kmと弓状に長く、海岸から高山まで様々な立地を有し、亜熱帯に存在するマングローブ林から、標高3000mを超える高山帯のお花畑まで多種多様な植物が生育しています。
 植物の分布は、その地域の歴史、気象、地質、地形さらには人間を含む他の生物との相互作用に基づく植物の進化と適応の結果を表しています。
つまり、植物の現況を把握することは生物多様性を考える上で重要な基礎情報となります。


図1 植生図(弊社作成)

  植生図を作成する為には、まず航空写真や衛星画像に地形図や等高線などのデータを重ね合わせて、植生判読に必要なベース図を作成します。そして既存情報を元に一次判読を行います。植生判読を行う上で画像は重要な情報となります。
次に現地調査を行い、航空写真や衛星画像の植生の見え方と実際の植生の見え方を確認し、個々の植生の内容や地域全体の植生の概要を観察し、植生情報を収集してきます。
 そしてベース図と現地調査で得た情報を擦り合わせて、ベース図に植物の分布ごとに区分線を引いて植生図を作成します。
 現在はGISの導入により植生図はデジタル化されていますが、昔は全て紙上で作業を行っていて、植物の分布ごとに手作業で色鉛筆を使って色を塗っていたそうです(図2)。


図2 紙植生図

 植生図をGIS上でデジタル化することによって、他の情報と重ね合わせることが可能となり、紙の地図上ではできなかった空間的な解析を行うことができるようになりました。例えば植生自然度や土地利用の経年変化の解析、また野生生物の生息域を明らかにするGAP分析ハビタット解析など生態的な構造の把握が可能になり、様々な研究に用いられています。
 また、衛星画像(図3)からリモートセンシングの機能を用いてパソコン上で植生を自動判読する事も一部可能になりました。図4は衛星画像(ALOS)を使用して教師付き分類を行った結果です。自動判読に関しては日々研究が進んでいます。ただし、衛星画像だけによる自動判読で全てを判読する事はまだまだ難しいとされています。


図3 衛星画像(襟裳岬)                    図4 教師付き分類結果

 環境を知る為にGISは非常に有効なツールだと思います。GISで視覚的な表現をすることによって、多くの情報の関連性が一目でわかるようになり、より効果的に問題点や現状をあきらかにすることができます。私は大学でGISを学んできたことから、環境問題を考えていく上で、GIS上に情報を展開して視覚的に捉えることは重要であると感じています。
 今後もGISを有効に活用し、環境調査で得た情報をわかりやすく伝え、より良い環境作りに貢献していきたいと思います。

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