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エコニュースVol.222

2011年12月01日

<陸の生き物シリーズ Part15>

幻を追う

株式会社エコニクス
環境技術部 陸域環境チーム 大湊 航一

 今年6月、北海道の石狩市で「幻のヘビ」とされてきたシロマダラが捕獲されました。北海道におけるシロマダラの確認記録は少なく、過去に札幌市や奥尻島で報告がありましたが、生きたまま捕獲された前例が無かったようです。捕獲したのは庄子信行さん(北海道希少生物調査会)。捕獲された個体は円山動物園に移送され、このニュースは北海道新聞でも報じられました。また、8月には日本蝶類学会がブータンの「秘蝶」と呼ばれるブータンシボリアゲハを現地で捕獲しました。本種は1933年に発見されて以来確認されることが無かったため、今回の確認は78年ぶりの再発見になるそうです。生物調査に携わる人間であれば、このような貴重種の発見・確認はぜひとも一度味わってみたい経験だと思います。
 当社が請け負う生物調査業務の中には、猛禽類、クマゲラ、ニホンザリガニといった絶滅危惧種を対象とする調査も含まれていますが、シロマダラのような極めて稀な種の捜索を目的とする調査は基本的にありません。しかし一方で、生物調査に携わる人間は常日頃から貴重種と対峙する心構えを持って現場に出ています。貴重種を現場で確認し、正確な情報を残すことは、調査精度の高さの証明につながるからです。一般に貴重種とされているものはヒトの目に触れる機会が少ないため、容易に採取・撮影できるものではありません。したがって、現場に入る以前に目撃情報や生態に関する知見を仕入れておくことが重要となります。貴重種と出会うには運も必要となりますが、努力次第で運が味方してくれる場面も多いように思えます。
 北海道は豊かな自然が残されており、多くの研究者・調査者が毎年あらゆる場所で調査を実施していますが、未だに「幻」とされる生物が存在していること、さらにその「幻」が顕在化する可能性を秘めていることは驚きです。しかしその中には、生息域や個体数の減少によって新たに「幻」となった種が含まれているかも知れません。例えば、大雪山周辺に生息する「幻のキツツキ」とされるミユビゲラは、1988年以降2006年まで18年間確認されませんでした。この発見自体はもちろん素晴らしいものですが、ミユビゲラの生息域の大半は国立公園の普通地域に含まれており、目撃例が無かった背景に伐採等の影響があったという見方もあるようです。
 現場に出て生物調査を行っていると、以前は普通に見られた種が少なくなっている、あるいは見つからないという場面に出くわします。調査時の天候条件や季節消長による変動であれば良いのですが・・・自分達が携わった現場で「幻」が増えていくというのは非常に残念なことです。また、そのような結果を出した場合に、当社の調査精度を疑われることになってしまうのもやはり悲しいことです(そこは絶対に避けたいところです)。調査・分析によって確固たる数字が結果として弾き出される物理・化学分野と異なり、生物のいるorいないという調査結果は、常にその信頼性を疑われる状態にあります。生物調査に携わる人間は、その調査精度の高さを常に証明し続けなければならない訳です。「幻」を追い求めると同時に新たな「幻」を生み出さないこと、普通に見られる種を常に「見られる」状態にしておくこと、これも調査員に求められる覚悟のひとつだと思う次第です。

 今年の現場でついに出会うことが無かったハナカジカ・・・北海道レッドデータブックに留意種として記載されていますが、年間を通して出会わなかったことはこれまでほとんどありませんでした。

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