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エコニュースVol.227

2012年05月01日

<食環境シリーズ Part7>

カロリー制限で長寿?

株式会社エコニクス
技術開発部 江本 匡

 2009年のサイエンスという科学雑誌に「カロリー制限」について非常に興味深い研究成果が発表されました。その後、報道等でも取り上げられましたのでご存じの方もおいでになると思います。「カロリー制限」が「病気の進行」や「病気による死」を遅らせることをサルで実証した研究です。アメリカで行われた研究で、進化的にヒトに近く寿命が短いアカゲザル(平均寿命は約27年、最長寿命は約40年)で20年以上実験を続けています(現在も進行中)。カロリー制限なしのグループと30%のカロリー制限あり(ビタミン・ミネラルは30%増加)のグループで観察を続けました。加齢関連疾患であるがん・心血管疾患・糖代謝異常による死亡数はカロリー制限なしで38匹中14匹、カロリー制限ありで38匹中5匹と違いがありましたが、なによりもその外見の違いに驚かされました。写真のようにカロリー制限をすると若々しく見えるのです。また別の研究で短期間ですがヒトでの実験もあり、血液検査でも各種の違いが認められているようです。


 

 一方、カロリー制限により活性化(目を覚ます)する「サーチュイン遺伝子」が見つかっております。この遺伝子は長い動物の歴史の中で、飢餓対策で利用され、遺伝子の長寿に関わる箇所を元気づけるともいわれております。本当に「長寿」に関連するかどうかは今後の研究に期待されますが、近年この「サーチュイン遺伝子」がカロリー制限だけではなくポリフェノールの一種である「レスベラトロール」によっても活性化されることがわかり、話題になっています。
 カロリー制限により本当に長寿になるのか、また老化防止や疾病予防に効果があるのかなど、まだ研究や議論が必要ですが、いずれにしても適度なダイエットは高脂肪の食事や加齢による疾病から身体を守る効果があることは明らかなようです。ただ、この「適度」が難しいようで、やり過ぎるとかえって老化を促進したり、不健康な状態になることもあるそうなので、カロリー制限時にはサプリメント等をうまく活用したいものです。
 飽食の時代といわれ「美食」を追求する人がいる一方で「食育」という言葉の重みも増してきています。日本には昔から「武士は食わねど高楊枝」という言葉があります。これを「痩せ我慢」と捉えることもできますが、腹八分いや腹七分の生活こそが心身ともに健康的で若さを保つ秘訣かもしれません。「北海道の食」に安全・安心そして健康という付加価値をつけるお手伝いをしたいと日々奮闘しておりますが、健康とは縁遠い生活で夏に向かってカロリー摂取が気になる腹の持ち主としてはサルに教えを請いたいところです。

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