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エコニュースVol.328

2020年10月01日

コンブ藻場造成に向けた取り組み

株式会社エコニクス 環境事業部
海域環境チーム 田村 勝


 前号では海の砂漠化とも言われる磯焼けについて触れましたが、弊社では磯焼けでお困りの地域に対して藻場造成の提案をしており、今回はその取り組みの一部を紹介します。

 ご紹介する場所は北海道の神恵内村の漁港内で、内容はコンブのタネを供給する実証試験です。方法は、生分解性の多孔性セルロース粒子にコンブの遊走子を付着させて海中に撒くという方法です(写真1)。この方法は、北海道ニチモウ株式会社、レンゴー株式会社と共同開発しています。

写真1 白いのが多孔性セルロース粒子(撒布状況)
※生分解素材で、数カ月程度で分解・消失します。有害物質も含まれていません。

 

 粒子を撒いたことによる発芽効果を確かめるために、漁港内の水深2mほどの場所に、写真2に示したようにタテ1m×ヨコ1m×高さ1mの四角い篭を設置し、底部には周囲の天然石を拾って敷き詰め、この中にさきほどの粒子を撒きました。撒布時期は2019年12月2日です。

 結果は、篭内に敷き詰めた天然石と篭自体にコンブの着生が見られました。これに対し、2020年春はこの辺り一帯でコンブが不作であり、漁港内周辺には全くと言っていいほどコンブが見られませんでした。

 


写真2 タイムラプスカメラによる篭内
(撮影日:①2020年1月30日、②3月3日、③3月8日、④3月27日)

 

 さらに、今回の試験経過を弊社のタイムラプスカメラで撮影したところ、新たなことも分かりました(写真2)。

 撮影状況からコンブの幼体は最初、篭自体と篭内の天然石に着生しますが、篭内の天然石に着生したコンブは、波の影響を受けにくいためか、成長する前にウニに食べられてなくなりました。篭自体には、初めは外枠や側面のメッシュ地に着生していますが(写真2-②)、次第に側面のメッシュ地をウニが登ってきて、メッシュ地に着生したコンブが食べられました(写真2-③)。最終的には篭最上部の外枠にだけコンブが繁茂しましたが(写真2-④)、これは水深が浅く波当たりが強い場所であることと、メッシュ地が破れてウニが登りにくくなったことで、ウニの食圧から守られたと考えられます。

 今回の実証試験では、タネ供給による方法が有効であることと、副次的に、コンブが繁茂するためにはウニの食圧を抑える必要があることが分かりました。

 今回紹介した取り組みは一部に過ぎませんが、私たちは今後も様々な取り組みを通じてコンブ藻場造成に挑戦していきます。磯焼けでお困りの際は弊社にぜひご相談ください。

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