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エコニュースVol.314

2019年08月01日

海の生き物の「向き」と「利き」

株式会社エコニクス 環境事業部
技術向上担当 武田 史絵

 

 突然ですが、現在生活をしている社会は、圧倒的に利き手が右手の社会だなあと思います。お財布のファスナーの開き口の向きであったり、駅の改札では切符の投入口が右側にあったりと、普段の生活の中で何気なく利用しているものが右利きの人に便利なように構成されていることが多い気がします。人間の「利き」の割合は右が9割、左が1割だそうで、この割合は日本国内のみならず、世界的に見ても傾向は同様 (国によっては異なり、文化の違いがあるようです)とのことです。人間の場合、利きの獲得に影響するのは脳の機能や習慣、学習など諸説あるようですが、海の中の生き物たちはどうでしょうか?

 

 魚類では、主にアフリカに生息する(うろこ)(ひれ)を食べる魚(例:鱗食性シクリッド科魚類 Perissodus microlepis)において「利き」があることが近年わかってきたようで、獲物を獲得する行動と関連があるという研究が報告されています。鱗を食べる鱗食魚の体を背側から見ると、体が右を向く個体と左を向く個体とがあるそうで、左利きは左顎、右利きは右顎が発達し、その結果として体の「向き」が異なっているようです(参考文献)。このような口の形状は、狙った魚を後方から襲撃する際の方向に関係していると考えられており、魚食性の魚では、自分の利きとは反対の利きの魚を捕食する傾向にあるそうです。

 右利きの餌が多いと、捕食者は左利きが有利ですから次世代では左利きが多くなります。一方で、餌は右利きが捕食され減少するため、次世代では左利きが優占することとなり、それを捕食する側は右利きが増加する・・・。このように、人間の場合は年変動せずほとんど一定である利きの割合も、魚の場合は年によって多数派が交代する現象が見られているようです。

 

 魚類の外見上の「向き」と「利き」が魚の行動と深い関係があるのであれば、例えば我々人間が漁獲のために仕掛けている網への入網も、その年に優占する対象魚の「利き」が関係し、好・不漁の一因となっているのかもしれません。また、海の中の生き物たちの食う・食われる関係性を把握する際には、それぞれの嗜好性はもちろんですが、今後は「利き」の影響度合いについても考慮できるようになってくるのかもしれません。

 

 

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