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エコニュースVol.148

2005年10月01日

外来種シリーズ Part2

仮想と実体験のバランス

株式会社エコニクス 
 環境事業部 調査・計画チーム 大湊 航一
小樽商科大学
 インターンシップ学生※ 梶 千絵里

 SEGA(セガ)が2003年1月より稼動を開始したカードリーダー型ゲーム機「甲虫王者ムシキング」が幼児や小学生の間で流行しています。様々なカブトムシやクワガタムシ、そしてワザが描かれた「ムシキングカード」を組み合わせ、ジャンケンの要領で甲虫同士を対戦させるゲームですが、子供のコレクションであるカードの束を持ち、傍らでプレイを応援・指示している親御さんの姿を見た方もいらっしゃるのではないでしょうか。このヒットによってペットとしての甲虫の人気が高まり、スーパーなどで外国産甲虫が売られている光景も珍しくなくなってきました。「ムシキング」流行の背景には、1999年に植物防疫法の一部が改正され、輸入可能な甲虫が4種から48種に増加したことがあります。かつてはマニアの間でのみ取引されていた外国産の甲虫でしたが、ムシキング世代の子供達とその親による購買活動により販売量が急増。それに後押しされる形で輸入解禁種の追加が行われ、2005年現在、国内に輸入可能な外国産カブトムシ・クワガタムシは549種にも上りました。また輸入量は99年時で約7千個体でしたが、04年時は約105万個体と、わずか5年で実に150倍に膨れ上がったことになります。しかし一方では、飼いきれなくなった甲虫を野外に放逐する行為が環境問題としてクローズアップされ始めました。生息環境が重なる在来種との競合、交雑による遺伝的な汚染、病原菌の持ち込みなど、生態系への影響を抑制する対応が急がれます。環境省は一部のクワガタムシを特定外来生物被害防止法の規制対象に指定することを検討していますが、外来種問題を広く一般に浸透させ、飼育マナーを徹底させることは、市民間の草の根的な活動が必要となってきます。

 「ムシキング」は、人間が遠い国から連れてきた虫たちが暴れだしたため、平和な森を守ろうとする妖精ポポと日本のカブトムシが立ち上がるシーンから始まります。この冒頭は「外来種による在来種の圧迫」を暗に仄めかしている訳ですが、それを子供達に理解させるには傍に立つ大人の気配りも必要なのです。ゲームを通して虫たちの世界を学ぶと共に、野外で実際に甲虫を見つけたり、外国産の甲虫を最後まで飼ってみたりするという実体験によって、子供達の生物に対する理解を深めていくことが可能になるのではないでしょうか。子供に与える「カード」を用意し、それを的確に用いることは、やはり私たち大人の役目なのだと思います。◆環境省の外来カブトムシ・クワガタ緊急キャンペーン

 ※今号は、弊社にてインターンシップ期間中の学生の方に、『実業務の体験』の一環として、エコニュースの原稿をお手伝いして貰いました。

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