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エコニュースVol.147

2005年09月01日

外来種シリーズ Part1

I'm an alien

株式会社エコニクス 
 環境事業部 調査・計画チーム 大湊 航一

 I’m an alien. I’m a legal alien. I’m an Englishman in New York.(僕は異邦人なんだ。法的に認められた外国人なんだ。僕はイギリス出身のニューヨーカーなんだ。)」・・・スティングが1987年に発表したアルバム「Nothing like the Sun」に収録した名曲、「Englishman in New York」の有名なフレーズです。数多くの辞書に記されているとおり、「alien(エイリアン)」とは「外国人、異邦人」と訳すのが正解で、さらに言えば「滞在国の国籍をもたない」という意味を含んでいます。

 「alien」と聞いてすぐさま連想された方もいると思いますが、我々のような「環境に携わる仕事」に就いている関係者にとって、最も頭を悩ませている問題のひとつが「alien species」つまり「外来種」です。在来種との競合や交雑によって本来の生態系を乱す国外起源の生物を指しますが、今年6月に「外来生物法」が施行され、ブラックバスなどの「特定外来生物」は飼育や放逐・放流が規制されることになったため、今現在、彼らは文字どおり「法的には認められない」エイリアンとして定義されたことになります。

 外来生物法の施行により、生態系に重大な影響を与える種の放逐・放流を牽制する動きが見えてきましたが、既に野生化している生物に対しての対応は慎重を要します。先ほど「頭を悩ませている」と書きましたが、実はこの「対応」という部分が外来種問題の核とも呼べる難題を含んでいるからです。例えばブラックバスを駆逐するためとは言え、釣り上げた個体を駆除ボックスに入れてオシマイという流れはどうでしょうか。ルールを遵守することは簡単ですが、環境教育を通じて子供達に生物とのつき合い方を教えている人達は、一概にそれが最良の選択であるとは考えないでしょう。逆に外来種を庇護する考えが横行しても問題の解決にはなりません。外来種問題は常にこのような「ヒトとしての考え方」の部分で葛藤を繰り返します。

 スティングは異邦人に「Be yourself no matter what they say.(自分自身であれ。他人が何を言おうと気にするな。)」と謳っています。人間によって持ち込まれた外来種は本能に従って子孫を残そうとしているだけで、我々が何を騒ごうと気にすることはないでしょう。しかし我々は生物を持ち込んだその責において口を噤むという行為は許されません。生態系を見つめ、他者と意見を交わし、外来種対策に奔走する。聞こえはいいですが、生物界のルールを知らずに悩み続ける我々こそが真の「alien」なのかも知れません。

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