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エコニュースVol.280

2016年10月01日

<海の生物シリーズ Part30>

チョウザメのこと

株式会社エコニクス 顧問
佐々木 達

 国内では、お歳暮に国産キャビアや燻製が登場し、国産キャビアの輸出が昨年解禁されました。
 また、北海道では沿岸でチョウザメの漁獲(捕獲)が急増し、さらには、美深町におけるチョウザメの養殖が魚肉の利用、キャビア生産ばかりではなくコラーゲンの抽出・販売など新たな利用が試みられる等、このところ何かとチョウザメが話題に上ることが多くなりました。
 弊社でも北海道の助成をうけ、昭和62年(1987年)から基礎研究を北海道大学・小樽水族館と産学協同でチョウザメ類の人工催熟の基礎研究を、また北海道電力の協力により天然水域での粗放的飼育を試みたことが懐かしく思い出されます。

 チョウザメ類は、古生代デボン紀に出現した条鰭類から分化した一グループとして中生代白亜紀後期(およそ1億年前)に出現し、ローマ時代にはすでに人間に利用され、洋の東西を問わず高貴な魚と言われ、肉は美味なものとして珍重され、また、キャビアも古くから珍味として喜ばれてきました。
 中国ではカラチョウザメを鰉(皇帝の魚)と書き、古来皇帝の食卓をにぎわせました。とりわけ清の時代には皇帝の宴には必ずチョウザメの頭部の軟骨(皇帝脳)、腸(竜腸)等が出されました。また、ヨーロッパとくにイギリスでは、その昔、戴冠式や皇室の宴席にはチョウザメ料理が出されたことから、チョウザメをロイヤル・フイッシュと呼び珍重されていました(木村1983、荒俣1989)。

 この様に、チョウザメは肉の旨さから昔から人気がありましたが、キャビアについては事情が違ったようです。
貴重なチョウザメの卵を“黒い金”として有名にしたのはロシア皇帝ニコライ二世(在位1894~1917年)です。彼は毎年11トンのキャビアを宮廷に給仕させました。長年にわたってキャビア料理を堪能してきたのは、ロシアだけでした。
 一方、アメリカニュージャージー州の安食堂では、お客にビールをたくさん飲ませるために、塩辛いキャビアを突き出しとして利用していました。19世紀のフランスでは、キャビアはスープのトッピングとして利用されるか、またはウナギやバーベル(barbelコイ科の淡水魚)といった淡水魚の釣りのエサ、あるいはニワトリのエサでした。
 1917年に勃発したロシアの二月革命によって集団移住したロシア貴族が、ロシアのキャビア製造技術をフランス南西部に持ち込んだことで、世界的にキャビアの人気に火がつき、現在では、キャビアは究極のグルメ食材となっています。
 オオチョウザメから取れる最高級のベルーガキャビアの価格は、現在キログラムあたり7000ユーロ(80万5827円:2016年9月12日)以上にも達しています。この為、密漁規模は金額にして5億ドル(511.5億円:2016年9月12日)以上に達しています。チョウザメの個体数が減少することで、チョウザメに対する需要がさらに高まり、チョウザメの個体数はさらに激減するという悪循環に陥っています。

 現在、ロシアを初め多くの国でチョウザメの養殖が盛んに行われ、外貨獲得の手段として利用されています。
 北海道においても美深町の成功事例を初めとして、白老町などでチョウザメの養殖が行われてきています。お歳暮商品としても登場した国産キャビアの消費が今後も見込まれ、さらには輸出も可能となった現在、北海道においても、地方創生、産業の振興の一助としてチョウザメ養殖が役立ってほしいものです。

 


チョウザメ類(撮影:西沢 邦昭、小樽水族館)

 

<引用文献>
荒俣宏(1989) 世界大博物図鑑 第2巻 魚類.平凡社,東京,531.
フィリップ・キュリー・イブ・ミズレー・勝川俊雄 監訳・林昌宏 訳(2009) 魚のいない海.NTT出版,東京,351.
堀田進・後藤仁敏・中井均(1984)魚類の時代 デボン紀.共立出版.東京,120.
木村重(1983)魚 紳士録(上).緑書房,東京,617.

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