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エコニュースVol.272

2016年02月01日

<陸の生き物シリーズ Part20>

北海道における鳥類の分布型1

株式会社エコニクス 顧問
藤巻 裕蔵

 日本列島は南北に長く、北と南では生物の分布に大きな違いがあります。鳥類でも同じで、北と南とでは鳥類相に違いがみられます。北海道に限ってみても、全域に分布する種がいる一方で、おもに西部に生息する種、東部に生息する種、低地に生息する種、高標高地に生息する種など、種によって分布状況は様々です。このように、分布には水平面での地理分布と垂直方向での垂直分布がありますが、鳥類は翼をもち移動能力が大きいので、多くの種で分布が季節的にも変化します。繁殖期に鳥類は巣を造り、または他種の巣を利用して卵を産み、繁殖しますので、巣を中心とした生活となり、分布は他の季節に比べると安定しています。そのため、これから述べる分布型については繁殖期に限定して話を進めたいと思います。

 北海道における鳥類の繁殖期の地理分布の型をみると、大きく次の三つに区分できます。1)北海道全域に分布する型、2)おもに西部(大雪山系と日高山脈を境にして)に分布する型、3)おもに東部に分布する型です。今回は1)の分布型について述べます。このグループの代表的なものはアオジです(図1、藤巻(2011)の記録にその他の文献や個人などの記録を追加)。鳥類の生息状況調査でアオジはどこででも記録されるほどで、広く分布する種です。これまで私が北海道における分布についてまとめた種のうち、このグループに入るのは、オシドリ、キジバト、オオジシギ、コゲラ、カケス、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ヒガラ、シジュウカラ、ヒバリ、ウグイス、センダイムシクイ、ゴジュウカラ、ムクドリ、アカハラ、コルリ、キビタキ、ニュウナイスズメ、スズメ、ハクセキレイ、カワラヒワ、ベニマシコがいます

 この分布型のなかには、コムクドリやトラツグミのように、道北地方にはあまり生息しない種もみられますが、今のところ上川盆地以北における調査地数が少なく、これらのグループの分布型が1)の型とはっきり区別できるかどうかははっきりしません。北海道では渡島半島に分布するホトトギス,おもに南西部に分布するツバメなどを除くと、南部または北部に偏って分布する種はそれほどいないようです。今後、道北地方での鳥類生息状況調査が進めば、種による分布の南北の違いが明らかになるかもしれません。


図1 北海道における繁殖期のアオジの分布
●=アオジの記録あり,〇=調査・観察したが,アオジが記録されず,・=調査・観察がない.

<引用文献>
藤巻裕蔵(2011)北海道中部・南東部におけるアオジとクロジの繁殖期の生息状況. 森林野生動物研究会誌 36:9-14.
*北海道鳥類データベース・藤巻版(http://bonasa4979.sakura.ne.jp)

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