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エコニュースVol.266

2015年08月01日

<湿原シリーズ Part8>

湿原の価値はどのくらい?

株式会社エコニクス 環境事業部
陸域環境Ⅰチーム 篠原 由香

 近年の報告(2000年:国土地理院)によると、北海道の湿地面積は全国の約86%を占め、全国ダントツ1位となっています(表1)。また、1ha以上の面積をもつ湿原が150箇所で確認されており、全国的にも有名な釧路湿原は日本で最大面積(約227km2)を誇っています(図1および写真1)。
 
しかし、北海道の湿地面積は明治・大正時代から減少し、減少率も残念ながら全国ダントツ第1位となっているのが現状です…(表1)

表1 湿地面積の変化(単位:km2)

国土地理院の湖沼湿原調査より引用一部改変

 

図1 全国湿地名称別の湿地面積順位(上位20)
国土地理院の湖沼湿原調査より引用



写真1 釧路湿原(篠原撮影)

 その昔、湿原は排水不良で役に立たない土地として厄介者扱いされており、昭和30~50年代初頭にかけて開発が飛躍的に進められ、その多くが消失してしまいました。しかし、近年(2000年前後)、湿原には特有の動植物が生息・生育しており、その生態系が様々な機能を有することが注目されるようになり、湿原の保護、保全および修復が重要な課題と認識されるようになりました。
 昨年(2014年)、環境省は近年の損失が大きい生態系である湿地(湿原および干潟)について、生態系サービスの経済的価値の評価を実施し、その結果を公表しました(表2)。

表2 湿原の生態系サービスの経済価値

環境省HP 湿地が有する経済的な価値の評価結果についてより引用一部改変

 表2のとおり、湿原の生態系サービスの評価総額は年間約8,391億円~9,711億円と試算されています。つまり、現存する日本の湿原が年間約1兆円の価値を有しており、その大部分が北海道に存在しているのです。
 こうした評価方法には留意すべき事項があり、湿原の価値を全て評価できているわけではありません。しかし、昔から厄介者扱いされ、破壊されてきた湿原の価値を経済的な価値で評価することで、湿原の保護、保全および修復理由を考える一つのきっかけになるのではないでしょうか?

 さて、来月のエコニュースは、このような貴重な湿原を象徴する植物であるミズゴケとその同定方法についてです。お楽しみに!

<参考文献>
冨士田裕子(2007)北海道の湿原生態系とその保全・再生. 地球環境12:7-20.
辻井達一・橘ヒサ子編著(2002)財団法人前田一歩園財団創立20周年記念論文集 北海道の湿原. 北海道大学図書刊行会.
“国土地理院の湖沼湿原調査”. <http://www1.gsi.go.jp/geowww/lake/index.html>
“自然の恵みの価値を計る-生物多様性と生態系サービスの経済的評価-“. <http://www.biodic.go.jp/biodiversity/activity/policy/valuation/index.html>
“湿地が有する経済的な価値の評価結果について“. 環境省. <http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=18162>

 
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