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エコニュースVol.016

1994年10月01日

海環境シリーズ Part1・北海道の沿岸地域と生物環境

沿岸は魚たちのオアシス

株式会社エコニクス
 顧問 駒木 成

 水棲植物は、光合成に必要な太陽光が到達する限界の水深(有光層水深)よりも浅い層を生活領域とし、有光層は透明度に影響されます。北海道沿岸での有光層水深は、透明度から判断すると最大でも50m水深程度となり、この水深層よりも浅い沿岸域は太陽光が表面から海底まで到達する水深域ですから100%の光合成を営む立体的な植物生産工場という事になります。ちなみに、この工場の炭酸ガス固定能力は、森林と同等ないしはそれ以上ともいわれるので、今後、砂浜で人工的な植物生産工場の建設が盛んになると思います。魚貝類はこの工場を目指して集まりますが、自分たちの餌場、産卵場、幼稚仔保育場として好ましいことを本能的に覚えているからでしょう。この沿岸地域には、外洋沖合から暖寒海流水が接岸します。また、陸地から河川水が流入するような場所では、この両者の水が混ざり低塩分水が形成されます。この低塩分水、つまり沿岸水は地先沖合水の塩分よりも低いので、各地域特有のものとなります。この沿岸水の規模や寿命は河川水の流入持続量に左右されます。つまり、天塩川や石狩川などの大河川系の沿岸水は周年広く分布し、流量変動が少ない中小河川系の沿岸水はその範囲は狭いが、分布はそれなりに比較的安定しています。

 一方、洪水量と渇水量間の較差が大きい「暴れ川」の場合、沿岸水の分布範囲が激動し、その結果として、植物生産工場や魚貝類の生活領域を不安定なものにします。この「暴れ川」や他の大中小河川は、多量の泥土や生活ゴミなどを運ぶことが多くなっています。これら運搬物の多くは近くの海浜に打ち上げられ、他にも、海洋レクリエーションによる様々な生活ゴミが海浜に置きざりにされるので、波打ち際近くまでを生活の場とする大小様々な生物生態系にとっては、大変迷惑な置き土産ということになります。

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