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エコニュースVol.048

1997年06月01日

水草生態系シリーズ Part3

水草界の道産子!?

株式会社エコニクス
 環境技術部 技術研究グループ 石原 知佳

 水生植物によって水質を浄化する事例でよく用いられ研究されている植物に、ホテイアオイがあります。ホテイアオイは熱帯アメリカ原産の浮漂植物で、日本でも沖縄・九州地方などで自然繁殖していますが、生長・繁殖力が旺盛で、米国では「青い悪魔」とも呼ばれ、10大害草にも数えられています。この植物は栄養塩吸収能力が高く回収も容易なため、水処理の試験にはよく用いられますが、水温が低いと生長が抑制されてしまうので、寒冷地では利用期間が短く、北方圏での使用には不向きという見方が一般的です。

 一方、植物の栄養塩吸収能力だけではなく、植物に付着する微生物も利用した水質浄化の事例にヨシ原があります。これは、ヨシを中心とする抽水植物によって構成されている湿地に人工的に汚水を導き、微生物によって有機物を分解させ、栄養塩を吸収・除去する方法ですが、処理には広大な面積が必要になります。

 この他にも水質浄化に水生植物を利用した事例は多くみられますが、多くは関東以西で行われています。北方圏に適した水質浄化システムを考えた場合、まず第一に寒冷地に適応した植物の利用が必要になります。北海道で自生している植物で、その中でも生育期間が長く、比較的どの河川でも見られる植物として、オランダガラシ(クレソン)やクサヨシがあげられます。特にオランダガラシは冬期でも水中で緑を保っています。河川に自生しているオランダガラシは川岸の雪を払い除けると、そこに少し紫色に変色した姿で見つけることができます。このような植物は密生した群落を形成し、根を水中にも出して生育するため水中の栄養塩を吸収可能です。また、細かく密生したマット状の根群を形成するため浮遊懸濁物を根元に凝集することができます。オランダガラシやクサヨシのような抽水植物の生育できる水深は限られていますが、浮島などを作りその上に植栽することによって水深の深い所での利用も可能になります。

 近年、人工改修された湖岸や河岸が近自然工法を用いて再改修される事例が増えてきていますが、より自然に近い湖岸や河岸を取り戻すためには、水辺や水中の生物にも目を向けて、その役割や生態について考え、それらと共存できる環境を整えてあげることが必要になってくると思われます。

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