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エコニュースVol.186

2008年12月01日

<生物多様性シリーズ Part5>

生物多様性の保存のために

株式会社エコニクス
環境事業部 陸域環境チーム 米田 豊

 私たち陸域環境チームでは、主に陸上や河川における動植物の生息状況とその生息環境に関する調査を行っています。
 具体的には、陸域の自然環境に関わる調査計画の立案、現況の把握、予測評価、環境保全措置の検討、事後の評価などを行っています。
我々人類は生態系(多様な生物と無機的環境から成り立つシステム)から資源の供給や環境の制御などの様々な恩恵を受けており、健全な生態系なしには存続することができません。このことから、生態系の基盤となる生物多様性を保全することが、国際的な取り組みとして重要視されています(「Econews Vol.183 生物多様性に再注目!」を参照されたい。)。
 さて、生物多様性を保全するためには何が必要でしょうか?
 個々の生物種は生態系の構成要素として、複雑に相互的に作用しています。そして、種の絶滅は取り返しがつかず、その役割を他の生物で補うことは困難です。したがって、生物多様性保全の方向性としては、まず個々の種の絶滅の防止が重要であると言えます。
 では、個々の種を保護するためには何が必要でしょうか? そのためには、予防的な取り組みにより人間活動に伴う野生生物への影響を回避・低減するともに、生息域を保全する必要があります。また、長期的なモニタリングによって野生生物の生息状況の変化を定量的に把握し、種の減少をいち早く察知することが必要です。その一環として、環境省で「種の保存法」に基づいて策定される保護増殖事業計画により、絶滅の恐れのある野生動植物の種の保全を図るため、減少した個体数を回復させ、また生息環境等を維持・回復させるための取り組みを行っています(北海道ではシマフクロウやエトピリカなど)。
 また、自然環境保全基礎調査(緑の国勢調査)という、陸域、陸水域、海域の各々の領域について、国土全体の自然の状況を定期的に調査を行っています。
「生物多様性の保全」と言われても、皆さんが普段の生活を送って中では、なかなかピンとこないかもしれませんが、実は身近な所でもその取り組みを感じることができます。
 例えば、かなり昔からガン類の主な採食地を保全するために、お米の生産者の協力を得ながら「はつかり米」や「ヒシクイ米」、「雁の里米」などといったお米を販売しています。
 最近ではJAと生協が中心となって設立した、NPO法人 生物多様性農業支援センターにおいて、生物多様性に配慮した生産者のお米には環境価値を上乗せして流通させるといった取り組みをはじめようとしています。
 また、水産物ではMSC認証制度と言われる(海のエコラベル)、水産資源や海洋環境に配慮した漁業について評価を行い、その取り組みを認証し、価値として認めようというものもあります。
 私たちは、自然に育まれた草木や鳥獣虫魚などの様々な生きものたちを大切に思っています。そして科学的な知見を用いることによって、地域に生息する動植物の保護やその生息地の保全に貢献し、これによって生物多様性の保全に尽力したいと考えています。

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