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エコニュースVol.188

2009年02月01日

<沖合漁場整備シリーズ Part11>

沖合漁場整備について(パート1)

株式会社エコニクス
環境事業部 水域環境チーム 峰 寛明

1  はじめに
 アーサー・C・クラークが1957年に書いた小説「海底牧場」は海洋で鯨を飼育する「牧鯨局」で働く技術者の物語です。わが国ではまだ小割生簀がやっと普及され始めた頃に書かれたお話です。鯨の行動範囲は外洋のほぼ全域におよび、深度も1万フィート(3千メートル)を超えることがあり牧鯨場はとても広い範囲となるわけです。
 外洋の広大な空間で食料を生産するなんて夢のある話ですが、夢でもなくなりつつあります。今回は近年注目されている「沖合漁場整備」についてお話します。
2  沖合漁場の背景
 わが国における漁獲量は、昭和59年をピークとして現在まで下降を続けています。特に沖合漁業で著しく減少しています。その中でも多獲性のマイワシ、スケトウダラ、サバ類が大幅に減少しています。減少の背景には昭和52年に制定された国連海洋法条約に基づく排他的経済水域(EEZ)の影響もありますが、全般的に資源量が減少したと見るのが一般的です。


わが国における漁業生産量の推移(水産庁HPより「平成19年度水産白書」)


わが国の排他的経済水域(海上保安庁HPより)

 わが国は国土面積に比べ海岸線が長く、領海と合わせた排他的経済水域(EEZ)の面積は世界第6位になります。ちなみに国土面積のみでは日本は第61位になります。貨物の90%以上は海から運ばれ、動物性たんぱく質の魚介類への依存度は約40%と他の先進国(10%程度以下)と比べて非常に多くの魚を食べると言えます。
 このような、海洋立国である日本を取り巻く情勢として最も大きなものは国際化の進展といえるでしょう。古くは北方領土を巡るロシアとの関係、竹島や尖閣諸島を巡る韓国、中国との関係が注目を集めています。また貨物船や漁船の安全な航行の確保の問題、領海内への他国籍の侵入などの問題が表面化しています。
 かつてこのような問題は運輸、水産業、防衛、国土といったそれぞれの省庁が独自に解決の道を図って来ましたが、海洋における諸問題は国益、外交の両面から見ても省庁の枠組みを超えて一元的に扱うべきと考えられます。もちろん食糧問題の主役である水産物の確保も海洋政策の重要なポイントです。わが国では平成19年に海洋基本法が制定、それに基づく海洋基本計画も策定され、「今、まさに海の時代」と期待を寄せています。(海洋基本法についてはEconewsVol172に詳しく書いてあります)
 水産業では、排他的経済水域(EEZ)において減少しつつある水産資源を回復させるために、平成19年からの新たな水産基本計画に基づいて沖合漁場整備を進めることとなりました。この整備は受益者が複数にまたがる事から、国が直轄で事業を進めることになっています。
 次回は、その沖合い漁場の整備についてもう少し詳しく書きたいと思います。
 

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