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エコニュースVol.192

2009年06月01日

<陸の生き物シリーズ Part12>

カミネッコンで、みんなの森をつくろう!

株式会社エコニクス
環境事業部 陸域環境チーム 田口 敦史

 当社は、札幌市・江別市・北広島市にまたがる、世界的にも珍しい大都市近郊の平地天然林「野幌森林公園」のすぐそばにあります。森の中には、都会では見ることのない様々な生き物が棲んでおり、人々の憩いの空間として親しまれています。
 開拓以前の石狩平野は、蛇行を繰り返しながら悠然と流れる石狩川を中心に、この公園のような森と広大な湿原が広がっていました。開拓により農地が広がり、札幌のような多くの人が暮らす街が生まれ、人々の生活は便利で豊かになりました。しかし、その一方で森は失われてゆき、かつて森に棲んでいた生き物達は、僅かに残された森でひっそりと暮らしています。
 私たち人間をはじめ、全ての生き物は森から多くの恵みを受けて生きています。私たちの飲む水は、森の落ち葉が降り積もった土が雨水をろ過し蓄え、きれいにしてくれたものです。当たり前のように吸っている酸素も、森の植物がなければすぐに足りなくなってしまうことでしょう。また、森林による炭素固定が地球温暖化対策として重要であることもよく知られるようになりました。
 その昔は、森の木を木材や暖房用燃料として使い、森を切って土地を農地などにしていました。私たちの生活は、森林という資源を消費することで豊かになってきました。
 その後、伐採されたままの山や使わなくなった農地は増え、このまま自然の営みに任せておいてもやがて森へと蘇るでしょうが、元通りの安定した森(極相林)に戻るまでには500年~1000年という長い年月が必要になります。
 木を消費するという一方だけでは、人間の真の豊かさを保つことはできません。それは自然な森林の存在が、私達の生活を支えているからです。従って、残された森を守っていくこと、そして新たな森をつくっていくことを考えなければならないのではないでしょうか。
 これまで、木を植えるという行為といえば、木材として使うための林業、防風林や砂防林などの防災事業、公園や庭などの造園など、森や木の持つ機能が人間の生活にわかりやすく直結したものばかりでした。もちろん、それはとても重要なことであり、特に木材資源を大量に消費した戦後の日本において、急速に森林を回復する原動力になりました。
 しかし、こうした植樹では、求められる機能の劣る樹種、一見何の役にも立たないように思える樹種は、わざわざ植えることはありません。より多くの生き物が活用しやすい、多様な樹種による森は、何か別の方法でつくらなければなりません。
 また、木を植えるという仕事は、大変な手間がかかる作業です。何年も一本一本大事に育て、最後まで面倒をみなければなりません。
 一方で、種から芽生えた小さな木が少しずつ育っていく姿を見守ることは、とても楽しいことでもあります。皆さんも庭の花壇や鉢植えの観葉植物を育てたことがあると思いますが、やがて地を覆うような大樹となる日を夢見ながら、木を育てていくことも、それと同じ大きな楽しみがあります。
 なるべく多くの人の手により、一人一人が楽しみながら、地球に生きる人の役割として木を植え、みんなで植えた木がみんなの森として育つ姿を見守っていく、そんな方法があれば、森づくりはどんどん進んでいくのではないでしょうか。
 そのためには、木を育てて植える作業を、より楽しく、簡単に確実に行える方法が必要ですが、その方法として考えられたのが「カミネッコン」という資材です。
 「カミネッコン」は、北海道大学の名誉教授である東三郎先生が考案された、紙で出来た育苗ポットです。一度聞くと忘れない、ちょっと変わった「カミネッコン」という名前は、「カミ」で「ネッコ」を「コン」パクトに守る、ということで名づけられました。
 木を植える時に、一番大事なのは苗木の根を守ることです。根は、水や養分を吸収しながら体を支える、人間で言えば消化器と足腰を兼ね備えたような役割を持っています。普段は土の中で守られているため、デリケートな器官なのです。また、水が多すぎれば根は腐ってしまいますし、不安定な状態にしてしまうと木全体が倒れてしまいます。


カミネッコン

 カミネッコンは、植えるときに根にダメージを与えず、簡単に植えるための方法として考案されました。
 再生紙ダンボールの型枠に、古新聞などの使わない紙を入れ、六角形の鉢を作ります。植える時は、この鉢で育てた苗木をならした地面に置くだけです。あとは、苗木はカミネッコンに守られた住み慣れた土の中から、少しずつ植えた場所の土に自分の力で根を伸ばしていく、という方法です。
 この方法なら、専門的な技術がなくても簡単に木を植えることができ、また穴を掘るような力仕事もありませんので、お年寄りや子供達でも植えることが出来ます。さらに、土が凍り植え穴が掘れない冬や、土がすぐ乾いてしまう夏など、植樹が難しかった季節でも、根を守ってあげることにより植えることが出来ます。


市民参加型植樹の様子

 最初のうちは根を守る大事な役割を持っているカミネッコンは、2年、3年と時間が経つにつれ次第に分解され土へと還ります。もとは森の木から作られた紙を、森をつくるために使い、森へと還すことにも繋がっています。
 実際に市民が参加して植えられた木々は順調に生長しており、考案直後に植えられた場所ではミズナラやハルニレが樹高8mほどに育つなど、みんなの森の実現に一歩ずつ近づいています。


10年経過したカミネッコン植樹地

 当社では、環境方針に基づいた活動項目の一つとして、『社会貢献活動として、社員植林活動を実施する。』を掲げています。今年度はその一環として、平成21年6月7日にえりも町で開催される「第60回 北海道植樹祭」に参加し、カミネッコンを用いた植樹を行います。
 また、事業としてもカミネッコン植樹の計画・指導を行っており、昨年度は沼田町、恵庭市、新篠津村、東川町で、植樹のお手伝いをさせて頂きました。
 森から多くの恵みを受けて生きている私達。森への恩返しの最初の一歩として、みなさんもカミネッコンで木を植えてみてはいかがですか。

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