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エコニュースVol.195

2009年09月01日

<化学分析シリーズ Part3>

地下水の硝酸性窒素汚染

株式会社エコニクス
環境技術研究所 試験分析チーム 春日 智博

 水は地球の誕生と同じ約46億年前に誕生し、私たち人間や動植物が生きていくうえで必要不可欠なものです。
 水質汚染は、長い歴史の中でも産業の発達や人口の都市集中が起きた、たった何十年かの僅かな間に急激に起こり始めたといわれており、人間活動の発展と共に事態が深刻化してきました。
 昔から飲み水として人々が利用してきた地下水も例外ではありません。日本では生活用水の約25%、アメリカでは半分、北欧ではほぼ100%を地下水に依存しているため、地下水の汚染は世界的にも非常に大きな問題であるといえます。
 特に地下水汚染の中でも、硝酸性窒素による汚染が目立っています。そのため環境省は、全国各地で徹底した監視・対策を行っていくために、平成11年に環境基準項目に硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素を追加しました。しかし、まだまだ改善傾向にはなく、環境省が毎年発表している地下水質測定結果をみると、平成19年度の項目別の環境基準超過率は、他の項目と比べ硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素が4.1%と最も高い値を示しています(平成21年8月現在で最新情報)。
 地下水硝酸性窒素汚染の原因としては、農地に過剰投与された化学肥料、未処理の家畜糞尿、生活排水、工業廃水など多岐にわたっており、それが土壌中で酸化され、地下水中に硝酸態窒素として蓄積されます。


図 硝酸性窒素汚染源

 硝酸性窒素自体は人間に対してそれほど直接的な害はありませんが、高濃度の硝酸性窒素が含まれる水を摂取する事で、胃腸内の微生物による還元作用によって亜硝酸性窒素が生成し、それが血液中のヘモグロビンと結合し酸素運搬能力を失い、酸欠状態になるメトヘモグロビン血症を引き起こす可能性があるといわれています。特に、胃酸の分泌が少ない乳幼児に症状が現れやすく、アメリカで新生児の突然死の原因として問題化したブルーベビー症候群(メトヘモグロビン血症)はこれにあたります。また、亜硝酸性窒素は、発癌物質であるニトロソアミンを生成することも指摘されているので注意が必要です。
 このような背景の中、エコニクスでは地下水のモニタリング調査や分析を行い、汚染の発見、また汚染の範囲の把握を行っています。
 実際に現場に行って調査をしていると、この美しい自然を壊したくないという気持ちが一層強くなるのですが、透き通って一見きれいに見える水も、分析室に戻り、分析を行ってみると実は汚染されていたなんてこともあり、環境汚染が広がっているのを実感させられたりします。
 地下水汚染は今後も大きな課題になっていくと思いますが、エコニクスの分析室では硝酸性窒素だけでなく、栄養塩全般(アンモニア性窒素、亜硝酸性窒素、リンなど)の分析も行っていますので、今後も様々な角度から総合的な判断を行えるよう、努めていきたいと思っています。そして昔のように安全でおいしい地下水が全国各地どこでも飲めるようになるよう願っています。

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