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エコニュースVol.080

2000年02月01日

シジミシリーズ Part1・シジミの生活様式 その3

ヤマトシジミ個体群の家計簿は?

株式会社エコニクス
 顧問 富士 昭

 消化吸収された栄養物質のうちで代謝活動のために使われた残りが成長という形で体に蓄えられるのは、私たちでもシジミでも変わりなく、動物での共通した事象です。そこで、年齢1・2年の若齢群が全体の87%にも及ぶ十三湖ヤマトシジミ個体群の1年間の燐収支、つまり、燐を通貨とした家計簿をお見せしましょう。

 下の表が1975年8月に現存量65mgPm-2のヤマトシジミ個体群の1976年8月までの満1年間における燐収支です。

 いつもそうとは限りませんが、1年後の現存量は初めの現存量の3倍にもなる大幅な黒字決算となりました。

 大変喜ばしいような内容ですが、この1年間の黒字は若齢貝の成長が内訳で、これが直ちに漁獲として私達が利用できる量ではなく、4~3年後に生き残った高齢貝が漁獲対象となりますので、いわば「成長-自然死亡」を利子とした定期預金のようなものが134.3mgPm-2という成長量の大部分ということになります。

 ヤマトシジミは水中に懸濁している粒状有機物を濾過して食べる摂餌形式をとりますので、ここで摂食対象となったのは粒状有機燐です。では、家計簿の収入を保障している餌料物質はどのぐらい供給されているのでしょうか。

 十三湖は岩木川の流入を受けるとともに日本海に開いている湖口を通して海水交流もあります。そのために、満潮時の日本海からと岩木川とから合計3,559.8mgPm-2日-1が十三湖内に流入する一方で、干潮時には2,386.5mgPm-2日-1が日本海に流れ出てしまいます。従って、十三湖内に残されるのは1,173.3mgPm-2-1となります。

 ヤマトシジミの摂食量の681.2mgPm-2-1はこの残留量の58%に相当しております。このことは水中に懸濁している粒状有機燐の約60%をヤマトシジミが摂食という形で除去しており、さらに、4%ぐらいを漁獲という形で人間が水圏外に持ち出していることになります。

 もう1つ、十三湖よりも閉鎖性の強い宍道湖での粒状有機窒素供給に対するヤマトシジミ個体群の摂食について紹介してみましょう。

 宍道湖には斐伊川などの河川からと湖内の基礎生産とから総計24.2トン日-1の粒状有機窒素が供給されています。窒素量として133.3トンの現存量を持つヤマトシジミ個体群は、この供給量から1日あたり22.0トンの粒状有機窒素を摂食しているということですので、供給量の91%がヤマトシジミによって取り除かれていることになります。

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