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藻場通信

磯焼けの海を海藻の

藻場通信 vol.3

 藻場通信も3回目の更新となり、弊社マリンラボのある函館は雪解けも進み、北海道の遅い春のきざしを感じられる今日この頃ですが、コンブたちの暮らす海中はというと水温約8度となっており、まだまだ冷たく人間の私たちにはとてもじゃないが浸かっていられる温度ではありません(公衆浴場の水風呂は20度前後から低くても12度くらいが多いようです)。

 人間には過酷な温度でも、コンブたちにとっては春の訪れを感じさせる快適な温度であり、前回の更新からぐんぐん成長を続けて単管やコンクリート板が見えなくなるほどに繁茂しています。

 

写真 水中ライブカメラの映像(2021年3月16日)

 

 私たちの育てているコンブは「マコンブ」という種で、国内で主に食用となっている種のうちもっとも古いコンブで、みなさんがイメージされるコンブの姿もこの種のイメージが強いかと思います。

 マコンブの生息地域は北海道では室蘭市から噴火湾沿いに恵山岬を超えて知内町まで分布し、本州では青森県の津軽海峡沿岸から岩手県北部まで分布しています。

 生息分布を聞いて寒い場所が好きな海藻であることはなんとなく分かったと思いますが、マコンブの生育に最適な水温は約10~16度(胞子体期)の範囲といわれており、10度以下の低水温には強く、20度以上の高水温には弱いという性質があります。

 
  一般的なマコンブ             マコンブの分布

 

 順調に成長を続けている私たちのコンブですが、この状態に至るまでには激しい生存競争を突破してきたのです。

岩肌を埋め尽くす海藻(日本海の某海域にて撮影)

 

 岩肌を埋め尽くす海藻(緑色にみえるのがエゾヒトエグサ、赤色にみえるのがスサビノリという海藻)の中に1本だけコンブ(ホソメコンブ)が生えています。この色彩豊かでとても美しい光景は、激しい生存競争の光景でもあるのです。

 自ら移動できない海藻は自分の生育に適した場所を確保するため、種間・種内で激しい生存競争を展開しています。例えば水深の浅い場所に生息する海藻は、乾燥や強い日光などに耐性があり、浅所では有利ですが、少し深い場所ではほかの海藻に負けてしまいます。満潮のときは海中、干潮のときは陸地となる潮間帯(ちょうかんたい)はほんの少しの水深差によって環境が大きく変化するため、それぞれの環境に適応した海藻や動物が暮らしており、潮間帯の生物多様性は熱帯雨林に匹敵するとも言われています。

 写真の1本だけ生えたコンブはこういった熾烈な生存競争の中で何とか居場所を確保したといったところでしょうか。

 

 私たちのコンブも多少の手助けを加えながら、生存競争を勝ち抜き健やかな成長と豊かな藻場を築いてくれることを願い見守っていきたいと思います。

 

次回は、4月25日に公開予定です。

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